田中一馬ブログ

力強く立てない牛は何を伝えているのか?

こんにちは。

但馬牛繁殖農家のお肉屋さん、田中畜産の田中一馬です。

色々な方とお話しさせていただく中で、改めて立ち姿って大事だなって思うんです。

頑張りました。。。

人は見た目ではないとよく言います。

だけどね、見た目からわかる情報ってたくさんあると思う。

力強く立つ牛は美しい!!

人と同じように、牛も立ち姿が大切です。

力強く立つ姿は牛を美しく見せます。

牛の姿形を競う共進会では、カッコよく見せるために蹄の手入れは必須です。

足元が悪いのに力強く立てるわけがありません。

こんなふうに伸びた蹄(奥)と削蹄後の蹄(手前)では立ち方も力の入り方も全く違う。

こんなのは論外です。

しかし、そもそも力強く立つということは削蹄でどうこうできるものではないんです。

力強く立たせるためのテクニックはあります。

ただ、本質は別のところだと思っている。

力強く立つ姿が美しいと感じるのは、立つという行為を通して牛の生命力を感じるからだと思うんです。

力強く立てない牛は何を伝えているのか?

子牛は生まれたばかりの頃、何度もこけます。

こけては起きて、こけては起きてを繰り返し、初乳を飲むために立ち上がる子牛。

その肢はプルプルと震えていますが、たった数時間でしっかりと地面を踏むようになります。

この写真からは逆に母牛の方が足に力が入っていないように見えますよね。

難産で子牛を引っ張り出した後でした。

お産直後で足に力が入らない母牛。

健康であれば牛は力強く立つ。

力強く立てない理由は牛からの体調不良のサインです。

削蹄しても力強く牛が立たない。。。

2年ほど前、親牛に与える草を極端に少なくしていた時期がありました。

受胎率も落ちなかったし、乳もよく出ていたので「親牛の状態は良い」と僕は思っていた。

しかし、いつも気になっていたことがありました。

親牛の立ち方を見た時に明らかに弱々しい牛が多かったということ。

飛節がくっついてX脚のようになったもの、後肢に全く力の入っていないもの。。。

当時の親牛。蹄も長いけど肢に力が入っていない。

こういった牛を見ると削蹄で何とかしようと思ってしまう。

『牛の立ち方は削蹄で解決するもの。』

そう言った認識は多くの農家で持っていると思います。

何より僕はプロの削蹄師。

あれこれ考えて切ってみるのですが、何故かどの牛も思うような立ち方をしてはくれませんでした。

一方で伸びた蹄であっても、しっかりと力を入れて立つ牛たちを色々な牧場で見てきました。

何が違うのか?

蹄しか見ていなかった僕には全くわかりませんでした。

蹄が伸びることで物理的に定位置に足をおけないことはあります。

削蹄によって蹄の負面を平らにして環境に合わせた角度を決めれば、基本的にはどの牛もしっかりと立つ準備は出来ている。

ただ、しっかりと立つにはそれでは足りない。

立ち方は牛の調子を伝えてくれる

蹄とは脱げない靴の様なものです。

用途に合わせて蹄の形を決めることは出来ても、足腰の強さは削蹄では改善できない。

それよりも飼養管理や餌による影響が大きい。

牛の体調が立ち方に現れているんだと僕は思っています。

2年前に親牛の飼養管理を全面的に変えてみました。

今までやっていた粗飼料をやめて乾草の量と種類を変えたところ、削蹄の有無に関係なく殆どの牛がしっかりと力強い踏込をするようになった。

この時になって初めて気がつきました。

立ち方が悪かったのは親牛の体調が悪かったんだってことに。

親牛の立ち方が強くなることで生まれてくる子牛も強くなった。

2017年は虚弱児ゼロ、子牛の死亡事故もゼロ。

改めて親の管理が大切だと感じた出来事でした。

同様のケースは削蹄先でも実感しています。

例えば子牛の軟便が多い農家さんでは子牛の立ち方は弱弱しい。

そんな子牛はアシドーシス気味なため蹄も伸びやすく、立ち方は蹄の長さが原因だと思いがちです。

しかしそうじゃない。

しっかりとした糞をする子牛は蹄が伸びていても立ち姿に力がある。

当たり前のことだけど体調が良いから踏ん張れるし足に力が入る。

削蹄はその踏ん張る力を上手に地面に伝え戻すためのものです。

力強く立つ牛は美しい。

それは牛の生命力を感じるからなんだと僕は思うんです。

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬(カズマ)

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。
好きなものはカメラ、カレー、コーヒー、純米酒。

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