田中一馬ブログ

牛肉生産は食べる人までを含めたバトンリレーだと思う

最後までしっかり餌を食べきった肉牛は美味い。

品種や血統。餌の内容や水。月齢に性別。
お肉の味を決める要素はたくさんある。

でもそれって実は確率論なんだよね。
牛は1頭1頭違う。豚や鶏と比べて個体差の大きい家畜だ。

A5でも脂に味のない牛もいるしA3でも美味い肉はたくさんある。メスより美味しい去勢牛だっている。月齢が行ってても美味しいとは限らない。

そんな牛と肉たちを今まで見てきて思うのは「しっかりと肥えた牛は美味しい」ってことだ。

しっかりと肥えた牛は美味しい

しっかりと肥えるってことは最後まで餌を食べ続けてくれる牛だってこと。

牛は巨大な第1胃で微生物が分解した繊維を消化吸収して大きくなります。牛の体調や気圧、餌の量や内容で第1胃の環境は簡単に変化し、小さな微生物たちは環境の変化についていけず死んでしまう。そうなると牛は餌を食べ続けることができなくなります。牛を飼うって同時に微生物を飼うことでもある。だから大きな体でも実はめちゃくちゃ繊細な動物だったりする。

最後までしっかり餌を食べ続けるってことは暴飲暴食させるってことじゃないんだよね。牛自体が健康でそれを維持できるよう常に人が関わるってことでもあるんです。

例えば僕たちのような繁殖農家は強い子牛を産んでもらえるように母牛の管理を大切にしています。体調や栄養管理だけではなく暑熱ストレスなども胎児の能力に大きな影響を与えることが科学的にも証明されている。だからこそ最も大切なのがお母さんの管理。
そして約10ヶ月かけてようやく子牛が生まれたら、まずは病気をさせないことです。その上で丈夫でしっかりと餌を食べられる胃袋を持った子牛に育てていきます。この時期は穀物よりも牧草がメイン。ステージによって牛の飼い方は全く異なります。

こういった一つ一つが「最後まで餌を食べ切ってくれる牛」に向けてのアクションなんだよね。

僕達が8ヶ月ほど飼育した子牛は家畜市場で肥育農家にバトンタッチ。そこから2〜3年かけて肉牛になり牛肉になっていきます。

しっかり餌を食べて美味しい牛肉となるように僕達は牛を飼っている。

牛肉生産は食べる人までを含めたバトンリレーだ

「子牛を販売して収入を得る。」

それだけを考えると繁殖農家としての仕事は子牛市場までなのかもしれない。
でも本当はそうじゃないんだよね。

僕たちは食べてくれる人が喜んでくれるために牛を飼っている。綺麗事でもなんでもない。そうじゃなきゃ続かないもの。

僕の場合は肉の販売もしてるからそんな気持ちが強いのかもしれない。

また、削蹄師として様々な現場で我が家から嫁いだ牛にも会うことができる。それも大きい。

人工授精師、獣医師、農協、削蹄師、餌メーカー、農機メーカー、工務店、運送業者、食肉センター、保健所、登録協会、行政、肉屋、そして僕たち繁殖農家や肥育農家等々。長い年月を多くのプロの手を経て和牛は食卓に届けられる。

でも実はそれだけでは成り立たない。
牛肉生産は食べる人までを含めて初めて成り立つバトンリレーなんだと思う。
だからこそ見れる限りを最後まで見届けたいと思うんだよね。

食べる人の笑顔までね。

 

あ、そうそう。お世話になってる肥育農家さんがクラウドファンディングをしてます。
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少しでも畜産業界の思いが食卓まで届きますように。

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬(カズマ)

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。
好きなものはカメラ、カレー、コーヒー、純米酒。

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