最終更新日2020.7.20 19:24
「繁殖農家が肉を売るなんておかしい」というのは思い込み
みつひめまる16という「肉牛」を買いました。
肉牛を買いました。50ヶ月齢の但馬牛(雌・一産)。お肉が動かない時期だからこそ僕ができることをやらなきゃだし。やってみたいと思う。既に満肉。月末に屠畜して来月からカットします!しっかりと牛見て肉見て喜んでいただける形で届けたいな。楽しみに待ってて下さいね。#みつひめまる16 pic.twitter.com/UHXQPqXwx8
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) May 14, 2020
5月中旬。コロナ禍で枝肉価格は暴落の最中、削蹄の兄弟子から「肉牛買ってくれんか?」と連絡をいただいた。
既に仕上がった50ヶ月齢の肉牛。
枝肉の競りのように肉質を確認しての購入じゃなく、「肉」として生体(牛が生きた状態)での売買です。
3日後出荷の #みつひめまる16。1産しているけど経産牛とは思えない体格だよね。但馬牛の雌で月齢は50カ月齢。それだけでも楽しみな人は多いと思う。普通だったら絶対ありえないもん。でもね、それ以上に牛を見て、言うことなしだなと今日思った。めっちゃ期待してる。楽しみにしてて欲しいです。 pic.twitter.com/Up9ZdTfTAR
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) May 22, 2020
僕は今まで自分の牛の肉しか販売してきませんでした。そういうもんだと思ってた。
でもこんな時期だから僕ができることをやらなきゃと思ったし、やってみたいとも思った。
5月に買った2頭の子牛(肥育素牛)だって同じだ。今までやったことだけにしがみつくとか、僕は一番のリスクだと思ってる。
あ、いや、単にやりたいことやらないと気が済まないだけなのかも。。。でもそれもすごく大切にしてる事だったりする。
みつひめまる16は見た瞬間に「面白そうな牛だ」と思った。この牛を僕に預けてくれることも嬉しかった。
屠畜した翌日に格付け。ロースの断面を見て驚いた。
脂が別格。食べてみたいと思うような最高の肉質だった。
いや、マジでびっくりした。。ガチで最高の肉質。前日屠畜だからサシの出は甘いけどね。冷やせばもっと出ると思う枝肉だ。既に脂が溶けてサシ消えてるし笑。脂質もかなり良い。但馬牛の雌50ヶ月齢。A4-9。390.5kg。10日寝かしてカットするよ。 #みつひめまる16 pic.twitter.com/e5oSk7fgXD
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) May 26, 2020
実はこのツイートを見て神戸の肉屋さんが「その肉売ってもらえませんか?」と翌日に来られたんだよね。有名な肉屋さんだから名前は知ってたけど面識はまったく無し。正直言えば自分で販売する方が売上は上がる。売り切る自信もある。だけど面白そうだと思ってしまった。
だから今回右半分は肉屋さんに卸売り。左半分を僕らが切って販売をする。やった事ないことは不安もあるけどワクワクもする。
#みつひめまる16 のお肉半丸(半頭分)は神戸の扇矢さんに卸す事になりました。肉好きなら誰でも知ってる肉屋の名店。一つのツイート見て「その肉売ってもらえませんか?」と翌日に見に来られたんだよね。面識無しです笑。売り切る自信はあったけど面白そうだと思ってしまった。さあ食べに行くぜー!! pic.twitter.com/1olBSE3NwX
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) June 5, 2020
販売は7月下旬。
とりあえずホルモンがめちゃくちゃ美味かったっす。
素晴らしい。やっぱり雌だな。とりたてホルモンなう。#みつひめまる16 pic.twitter.com/Cu5dSaWf5d
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) May 26, 2020
モモ系もヤバかったな。。
本日は #みつひめまる16 のイチボ、ランプ、ウチヒラです。モモ肉は正義だね。 pic.twitter.com/QoZMJW7WUF
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) June 24, 2020
サーロインは別格だった。
#みつひめまる16 最後の試食はサーロインです。凄い。美味い。独り占めしたい。不覚にもそう思ってしまった。ロースだけ明らかに別格だ。。肉にした瞬間からずっと思ってた通りの肉質と脂質だった。脂の甘みと味の味の濃さのバランスが神。表現力ちくしょーーー!!美味さ伝われーーー!! pic.twitter.com/Z0yGlQBQOy
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) July 13, 2020
楽しみにしてて欲しいです。
「繁殖農家が肉を売るなんておかしい」というのは思い込み
冒頭でも書いたけど、僕はずっと自分の牛しか扱ってきませんでした。
「我が家で飼っている牛を最後まで届けたい。」
その思いで牛肉の販売をしてきた。でもその一方で自分で作った枠にずっと囚われているとも感じていた。
牛肉は自分の牧場で生まれ育てたものだけ販売するって言うのは僕が作った枠なんだよな。。。肉を仕入れて販売する。子牛を買って肥育する。こんなの当たり前のことなのにね。見ないフリしてた。囚われてたな。
牛肉は自分の牧場で生まれ育てたものだけ販売するって言うのは僕が作った枠なんだよな。。。肉を仕入れて販売する。子牛を買って肥育する。こんなの当たり前のことなのにね。見ないフリしてた。囚われてたな。
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) May 8, 2020
例えば放牧での牛肉生産。13年前に始めた当時は半年経っても全く売れずに自分で食べてたんだけど、少しずつ認知され、気づけば30分で牛1頭が完売するようになっていったんだよね。
でも売れれば売れるほど「人がしないことをするから肉が売れてるんだ。僕は放牧以外に手を出しちゃダメだ。」って、勝手に枠を作って変化を避けるようになっていた。変わったことをしてるくせに、安定っぽいものが目の前に現れると「ここが安全だ!」と安心して止まろうとする。でもそんなものは錯覚なんだよ。ただのやらない言い訳。
実際に普通に肥育した牛肉は同じように売れた。
むしろ放牧の牛よりも売れている。
肉どころかパーカーやTシャツや帽子だって売れる。
たなちくキャップのご注文ありがとうございました!! https://t.co/EiaolF4vm4
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) May 30, 2020
もちろん最初からこうだったわけじゃない。この勢いが続くとも思ってない。
ただね、多い少ないはあれども、僕の良いと思うものを信じてくれる人がいるって事は最初だって今だって同じだったと思ったんだよね。
だからこそシンプルに自分のやりたいこと、それを信じてくれる人に向き合えばいいと今は思うのだ。
「この肉、食べたら美味しかったので、僕は超オススメっす!!」とかね。それだけで良いのだ。むしろそれが聞きたいのだ。 かずお
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) June 9, 2020
「但馬牛、神戸ビーフ、A5ランク、希少部位、グラスフェッド、熟成肉etc」巷にあふれたそんな言葉より、「これは僕がオススメします!」って言葉を信じてもらえるように。これからも愚直に伝え続けたいと思う。
今回のみつひめまる16もそんな気持ちで向き合ってる。
今後は僕のオススメの焼肉セットとか、お肉の定期便なんかも作りたいな。うちの牛とか関係なくね。きっと喜んでくれる人はいると思う。
クタクタで帰ったらビールが届いてました。気持ちアガるーー!!短パン社長オススメビールセットはマジで美味しいのだ。→https://t.co/pgE0w4UWkF
僕も一馬オススメ肉セットとか作ろうかな。「A5ランク」なんて言葉よりも「僕のオススメです」って言葉を信じてもらえるように。愚直に伝え続けるのだ。 pic.twitter.com/beOTIQSgY2— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) June 10, 2020
「繁殖農家が肥育をするなんて分不相応だ」「肥育もしてないのに肉を売るなんて順番が違う」今までそんな事をたくさん言われた。
でもそれって思い込みなのだ。
人に言われて「そうだよな。。」と枠を作ってしまうのも自分自身が作った思い込み。
繁殖農家だけど職業は田中一馬です。
笑われそうなそんな道をこれからも模索していこう。
一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。