最終更新日2019.1.8 18:08
牛飼いの先にあるもの
大晦日ですね。
こんばんは。
但馬牛繁殖農家のお肉屋さん、田中畜産の田中一馬です。
今年も色々なことがありました。
命をつなぐ仕事
「牛は死ぬもんだ。」
ギクッとする言葉だけど、これ、牛飼いなら分かると思う。
屠畜をして肉になるという話ではなく、【命ある生き物だから何があるかわからない】っていうこと。
僕らは牛がいてこそ生活ができている。
それでも事故は起きてしまう。
どれだけ手を尽くしたと思っても、命に絶対なんてない。
先日こんなブログを書きました。
26℃と超低体温で死の直前。
一緒に4時間お風呂に入って復活した子牛の話です。
(画像をクリックすると記事に飛びます。)
あれから3週間。
この子は親の乳だけでは物足りなく、ミルクもガンガン飲むようになりました。
26℃と超低体温で死の直前。一緒に4時間お風呂に入って、復活した子を覚えている人はいるかな?あれから3週間。親の乳だけでなくミルクもガンガン飲むようになった。哺乳瓶が陰圧で凹むくらい。まだまだちびっ子だけど、うれしいね。 pic.twitter.com/D8Rq3h1o9M
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) December 22, 2017
ミルクって咥えればゴクゴク飲めるものじゃない。
1回に数mlずつ吸っているんです。
3リットルのミルクを飲むのに400回以上も吸う子牛たち。
ダイソンよりも吸引力あるよね。
哺乳瓶が陰圧で凹むくらい。
まだまだちびっ子だけど、こんな姿を見ると嬉しくなります。
生きようとする意思を繋げた気がする。
このことをブログに書いてFacebookでシェアしたところ、北海道の酪農家さんからコメントをいただきました。
初めまして。私は、北海道で牛飼いをしています。嫁いだことで牛飼いをはじめて一年半。右も左もわからないままとにかく必死に牛と向き合う日々です。先日、田中さんが書かれていた低体温症の子牛のお風呂の記事拝見していたのですが、今朝、乾乳舎で瀕死の子牛と遭遇しました。予定よりも若干早い分娩で、親牛も舐めてやっておらず、発見した時には体毛が凍って目が白く濁りはじめていました。もうムリかも…と思ったのですが、田中さんの記事を思い出し、大きな一輪車にお湯をためて即席のお風呂を作り温めること2時間。無事に蘇生して、元気にミルクを飲んでくれました。もし田中さんの記事を拝見していなかったら、この子牛の命を繋ぎ止めることはできませんでした。本当にありがとうございます😊とにかくお礼をお伝えしたくて、突然で失礼と思いながら書き込ませて頂きました。
こういうのが本当に嬉しい。
牛が死ぬ。
牛を飼っていてこれほど虚しいことは無いから。
牛飼いは命をつなぐ仕事。
牛飼いの先にあるもの
2017年の大晦日も最後の最後まで気が抜けなかった。
朝牛舎に行くと産室の中で羊水がカピカピに乾いた子牛が座っていました。
「ああ、やっぱり親が舐めてない。。。」
初産の場合、子牛を上手に育てられないケースが多々あります。
顔を上げて一見元気そうな子牛でしたが、デジタル温度計で体温を測ると29.7℃。
平熱よりも10℃も低い。
即家に連れ帰り、お風呂です。
2017年も最後まで気が抜けない。。。朝牛舎に行くと産室の中で羊水がカピカピに乾いた子牛がいました。親が舐めてない。。初産の場合たまにあります。デジタル温度計で体温を測ると29.7℃。平熱よりも10℃も低い。当然即風呂です。心臓は強く動いているので大丈夫。2時間じっくり混浴します。 #牛ネタ pic.twitter.com/EIFSFZ8Bqd
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) December 30, 2017
お風呂から上げたら一刻も早くタオルで拭いてドライヤー。湯冷めするし、再び体温が下がると次はお風呂じゃ難しい。お風呂も体力使うからね。そんな時はこのドライヤーが大活躍。恵比寿で美容院やってる友達から買ったんだけど全然違うよ!!子供の髪を乾かすのも早くてふわふわ。凄く良い!! #牛ネタ pic.twitter.com/BaKsCaHjD9
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) December 31, 2017
お風呂っ子牛、牛舎に戻って親の初乳を飲みました。もう大丈夫。舐めなかった親も子牛を拒絶はしなかった。初めてのお産で戸惑ってただけなんだよな。でも親の事情なんて知らないし関係ない。子牛が生きて育つことが正解だと思うから。繋げてよかった。 #牛ネタ pic.twitter.com/joI4Y57s7w
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) December 31, 2017
牛舎に戻して、親の乳飲むのを確認して、今スヤスヤと寝てる姿を見たところ。
ようやくホッとした。
調子がいいと油断した途端にこれだ。
今年はたくさんの出来事がありました。
その一つ一つが僕にとっては大切なものだけど、あえて1年を振り返るなら僕はこれをあげたい。
ずっと目標だった『1年を通しての子牛の死亡事故ゼロ。』
地味な目標かもしれない。
高値販売や規模拡大や賞を取ると言った人の目に触れる部分じゃないしね。
でも、僕はここに凄くこだわってきた。
生きていることは当たり前、だけど当たり前じゃ無い。
だから本当に嬉しい。
おかげさまで今は我が家はお肉を買ってくれる人がたくさんいる。
応援してくださるお客さんがいてくれることで、牛肉販売は10年も継続出来てる。
ここは僕にとって凄く大切な世界。
ただ、同じくらい、牛があっての牛肉っていう気持ちもある。
牛がなければ牛肉なんてない。
だからこそ牛飼いの先にあるお肉を届けたい。
そんな事を思う大晦日です。
来年も事故ゼロを目標に、大切なものを大切に進みたいな。
さあ、来年も主観たっぷりの牛の世界を発信していきますね(笑)
引き続き田中家まるごとよろしくお願いいたします。
皆さんも良いお年をお迎えくださいね〜!!