田中一馬ブログ

牛のツメを短くすることが削蹄ではない

こんにちは。

但馬牛の繁殖・削蹄師・放牧牛肉(肉屋)の田中一馬です。

あ、こっちです。

 

削蹄師は牛の靴屋さん

牛は2本の蹄(指)で何百キロもの体重を支える動物です。

この蹄の形を整える作業を削蹄と言い、それを仕事としているのが削蹄師。

オーダーメイドの牛の靴屋さんって感じですね。

しかし蹄は靴とは違って①脱げない成長するといった大きな2つの違いがあります。

蹄は成長し続けるため、摩耗しない環境では魔女の靴のようになります。

これはしんどい。

一方、放牧メインの牛であれば野山を駆け回ることで蹄は摩耗し、自然な形に納まります。

家畜として飼育される牛のほとんどは牛舎で飼われています。

牛舎内では適切な蹄の摩耗が難しく、削蹄を行い蹄のケアをする必要があります。

牛はいろいろ、蹄もいろいろ

肉牛と乳牛では品種も飼い方も飼われている環境も大きく異なります。

こういった様々な要因に合わせて削蹄は行われます。

品種による蹄の形の違い

牛には黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、ホルスタイン、ジャージー、ブラウンスイス等、いろいろな品種があります。

蹄の長さ、蹄の角度、蹄の質も品種ごとに違います。

②飼養管理の違い

子牛、繁殖牛、肥育牛、搾乳牛では与える餌の量や内容が全く違います。

蹄の成長は牛の栄養状態に左右されるため、エサの違いは蹄の伸び方の違いになってきます。

削蹄で蹄の伸びをコントロールすることはできませんが、蹄の状態を見ることは飼養管理上の重要な情報源になります。

牛のいる床の状態の違い

コンクリートの上で歩いて生活する牛、つなぎ牛舎で飼われる牛、オガクズふかふかの上で生活する牛、糞とオガクズで硬い粘土状になった床で過ごす牛。

乾いた環境、水分の多い環境。

牛の生活する環境は蹄の形を決める一番大きな要因となります。

牛のステージの違い

牛乳を搾るのか、和牛の子牛を生産するのか、肥らせて肉にするのか。

月齢や大きさ、家畜としての用途、農家の考え方など、その牛のステージによって求められる蹄の形は変わります。

登山に革靴で行く人はいません。

マラソンを走るときに登山靴を履く人もいません。

用途に合った靴があります。

削蹄も同じ。

用途に合った蹄があります

万能の靴が無いように、万能の蹄の形もありません。

ツメを切ること=削蹄ではない

ちょっと前のツイッターの投稿

これホントにそう思うんです。

蹄を切るくらいのことは枠場があったら誰でもできます。

何が牛にとってベストなのか、それを理解することはとても難しい事です。

僕は牛飼いを生業としています。

だからこそ余計にその思いは強い。

「こういう飼い方しとけば大丈夫!」なんて万能な方法は個体差の大きい牛ではありえません。

削蹄も同じ。

時代とともに変わり続ける牛と飼養管理の中で「不変的な技術」なんてないのです。

僕の考える蹄の形は年々変わっています。

それはもしかしたら間違っているかもしれません。

でも、間違ったら変えたらいいんです。

考え続けるからこそ変えることができます。

僕は乳牛を飼ったことがないので酪農のことは知りませんし、どんな牛でも切れるオールマイティな削蹄はできません。

でも和牛は違う。

和牛農家だからこそ、和牛のステージと環境に合わせた削蹄を考えていきたい。

和牛に特化した削蹄師の形を、いつも模索しています。

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田中畜産 代表 田中一馬

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬(カズマ)

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。
好きなものはカメラ、カレー、コーヒー、純米酒。

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