田中一馬ブログ

老廃牛はミンチにしかならない??

老廃牛はミンチにしかならない?

昨日、ある県外の農業高校の生徒さんからお電話をいただきました。

学校で繁殖牛を飼っているのですが、16歳という高齢で屠畜しようと思います。どうせなら自分たちでお肉までやって販売したいのですが、16歳というお婆さん牛は商品として価値があるのでしょうか?2件ほどお肉屋さんに聞いてみたところ「そういったのは全てミンチになる」と言われました。田中さんはこういった牛のお肉を販売することについてどう思われますか?

といった内容でした。

16歳という年齢、僕は全然問題ないと思います。 もちろん出荷する時の状態にもよるのですが、飼い直しをして肥らせて出すとのことだったので「美味しいんじゃないですか~」と答えました。

こんな牛もいたしね→ブログ【22歳のおばあさん

一方で、お肉屋さんの言い分もわかります。

・店に並べているお肉と比べ、年齢の進んだ牛の肉は色が濃く見た目が悪い。
・既存のお客様からの評価も受けにくくリスクがある。
・肉の硬さも気になるし、筋引きがやりにくい。
・時間をかけてショーケースのスペース割いてまでやるメリットがない。
・委託されたとしても手間がかかりすぎてやりたくない。 (明らかに他のブロック肉との別工程になるし、肉量も少ないので加工賃も取りにくい。)

 

だから老廃牛はミンチ。

これって至極まっとうな思考だと思うんです。

だけどそれは『老廃牛がミンチとしてしか食べられない』って事ではないわけです。 年をとれば取るほど肉の味は濃くなります。 確かに使いにくい点は多いけれど、それだけではないその肉の良さは必ずあります。

(22歳でお肉になった「いつひめ」・写真は19歳頃)

自分の肉の価値を他人の評価に一任するのは放棄でしかない。

僕がやっている放牧の経産牛肉は、一般的な牛肉生産の理屈だとダメなお肉なわけです。

年とった牛だし、出荷前日まで放牧して青草を食べている。 ダブルでダメダメ。

放牧と赤身のイメージが強い短角牛であっても、出荷直前まで放牧することはありません。 子牛の時期の8ヶ月ほどは親子で放牧に出しますが、その後1年半近くは牛舎で通常の肥育牛として肥育されます。

直前まで放牧すると、牛肉の味や見た目、サシの入り具合に影響してしまうからです。 (日本短角種の繁殖雌牛)

僕も最初の頃は「そんなことをしたら肉が臭くなる、水っぽい肉になる、オージービーフみたいに固くて食えたもんじゃなくなる。」 「美味いはずがない!」といったことをよく言われました。

しかし、実際に僕が販売しているお肉が「美味しくない!」とクレームだらけかといえば全然違う。 むしろ「こんなお肉食べたことなかった!」っていう手紙やメールをたくさんいただきます。

これは僕の生産するお肉がすごいでしょって話ではないんです。 最初はもっともっと評価は低かった。 放牧敬産牛肉は放牧することでの脂の甘みや、但馬牛だからこその肉の風味、経産牛の味の濃さが特徴で肉の味は間違いなく美味しい。

でも肉量が取れず、筋は硬く、肉のキメも粗いのでドリップがよく出る非情に扱いにくいお肉。

だからお肉屋さんにカットを委託していた時は7割くらいが切り落としかミンチだった。 それが自分たちでカットの仕方や食べ方の試行錯誤をすることで、少しずつお肉の提供の幅も広がり、認知していただけるものになってきた。 気がつけば僕にとってもお客さんにとっても放牧敬産牛肉は特別な肉、なくてはならないお肉になっきている。

当然うちの肉が口に合わない人もたくさんいると思う。 ただ、周りの意見だけで『こんな肉はあかん!』なんて決めることは、ミンチにしかできない肉を自分で作っているだけのこと。

ミンチにしかできない肉はあっても、ミンチにしかならない肉なんてないよ。 自分の肉の価値を他人の評価に一任した時点で放棄でしかないと思うんですよね。

 

あ、ミンチも美味しいからね。

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬(カズマ)

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。
好きなものはカメラ、カレー、コーヒー、純米酒。

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