田中一馬ブログ

錆びた道具がサンポールで甦る??

こんばんは。

足を怪我して削蹄ができない、削蹄師の田中一馬です。

「削蹄鎌の研ぎ方」について書いた記事が思いのほか好評で驚いています。

続きを書きたいのですが、2ヶ月近く削蹄していないと駄目ですね。

自信を持った記事が書けません。

正しいかどうかではなく、自信を持って書こうと思えば最前線や最中でないと書けないもんだなと改めて思いました。

さんさんさんさんサンポール

こんなCM覚えてないですか?

便器の洗剤サンポールです。

強烈な酸(塩酸)でトイレの黄ばみを落とす洗剤ですが、金属の錆びとりにもよく使われているようです。

普通の刃物なら砥石で研ぎますが、牛舎にはお役御免となった道具たちがたくさんあります。

以前「この子たちをサンポールできれいにしてみよう!」と試したことがありました。

錆びが落ちるヨ!!サンポール!!!

まず容器に水を入れ道具をほりこみます。

サンポールをドバドバっと。濃度も1:1くらいと適当です。

すぐに錆びた金属から泡がプツプツと出てきます。

そのまま1日置いておくと。。。

トレイの底にサビがびっしり。

すごい錆び落とし力です!!

道具たちも御覧の通り

サンポールは錆びた部分を落とすけど。。。

初めて見たときはこの錆び落としの能力に感動して、ちょっとした錆にもサンポールを使っていました。

この蹄鑢(ヤスリ)なんて研ぎようがありません。

それが、こうですもんね。

サンポール投入後1時間で、気持ちいいくらいサビが落ちていきます!!!

しかし、この方法は万能ではありません。

この写真で説明してみましょう。

①酸性化でかえって錆びちゃう?

サンポールは金属を強烈に酸化させ、さびを落とします。

つまり薬液から取り出した時点で強酸性なんです。

そのため出した後はすぐに重曹などアルカリ水溶液の中に入れてやらないと、急速に錆びがきてしまいます。

写真の鑢も水洗いしかしなかったため、出して5分ほどで赤サビが出てきました。

②腐食が錆びていない鉄まで進む。

『錆びた道具がサンポールで甦る?』とタイトルで書きましたが、残念ながら甦りません。

あくまで「錆びている部分を溶かすだけ」です。

サビが進んでいる場合は金属自体がかなりボロボロになっています。

サビをとれば即使えるというものではありません。

(ヤスリの写真をよく見るとわかりますが、刃がボロボロで使い物になりません。)

また、10%近い塩酸なのでサビを落として出てきた金属にも影響が出てしまいます。

浸けておく時間にもよりますが、一見きれいになったように見えても金属の強度は大きく低下してしまいます。

結局は普段の手入れが大切だってこと。

結局道具を使うためには普段からの手入れがものを言います。

どれだけ錆を落とせてても、錆びた部分は甦ることはないのです。

僕は道具を研いだら刃物には油を刺し、皮のケースに入れて保管します。

もちろん皮のケースにも油をしっかりしみこませています。

専用の油がない場合は刃物にはシリコンスプレーが早く乾くのでお勧めです。

皮ケースはCRE556などのオイルスプレーで十分です。

こうしておけば常に最高の状態で道具を維持することができます。

もちろん、錆び落としなんて全く必要ないですよ。

サンポールはトイレで使ってくださいね!!!

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として様々な農家の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛を中心に長期肥育や経産肥育、放牧牛肉の生産などをスタート。
好きなものは牛肉、漫画、純米酒、ウイスキー。ここ1年はサウナにドハマり中。

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