最終更新日2019.1.8 19:05
子牛を病気から守るために~親牛の鎧を剥がしてみよう!!
こんにちは。
但馬牛繁殖農家のお肉屋さん、田中畜産の田中一馬です。
この時期我が家では子牛の誕生が続いています。
我が子が気になって仕方ないお母さん。 #追加哺乳 pic.twitter.com/F1nErd0GKw
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) March 24, 2017
初乳は子牛の命綱
生まれた子牛を病気にしないために、最も大切なものは『初乳』です。
子牛は人間と違い、胎盤を通して母牛から免疫をもらうことが出来ません。
無防備な状態で生まれてきた子牛が、免疫を獲得するために必要なのが母牛からの初乳なんです。
この初乳には3つの大切な効能があります。
①栄養源の供給
②免疫の確保
③ホルモン伝達物質の獲得
この中で大切な②免疫の確保。
これを邪魔するものがあります。
それが、、母牛についている鎧です!!
鎧とは牛の体についた糞が固まったもの。
たった10数分で母牛からの免疫が倍になる?
冬から春にかけ、牛の毛は糞が付きやすくなります。
特に繋ぎ牛舎の場合は必ずと言っていいくらい鎧が付きます。
この鎧が付いたまま分娩をすると、子牛は不衛生な状態で初乳を飲むことになります。
口から入った大腸菌は腸管に食い込み増殖します。
すると、、、
大腸菌が先に入ることで、免疫の吸収率は半分に落ちてしまうんです。
鎧は牛を守るものではなく、単なる大腸菌の棲家。
だからお産前は鎧を落としましょう!!!
「たった10数分で母牛から移行する免疫が倍になる。」
そう思ったらめちゃくちゃ割のいい仕事ですよね。
牛の側に立って考えるという事
僕が就農するまで研修していた牧場では、お産の直前に必ず鎧を落とし、タオルで乳房をしっかりと拭いていました。
これって免疫の吸収率が半分に下がるからやっているわけではなく、子牛に清潔な状態で初乳を飲ませたいっていう思いだけなんですよね。
様々な研究されたデータをもとに対策を練ることも大切。
一方でシンプルに牛の側に立って考えても、同じ場所には行きつくことが出来る。
それってすごく面白いなって僕は思うんです。
そんなことを言っている僕も、鎧を落とすようになったのは最近です。
「牛にとって何ができるかな。」
そんな気持ちをいつになっても忘れたくないなと思う僕でした。
粉末初乳による対策
ちなみに、、、我が家は親の初乳を飲ませる前に粉末初乳を2袋(1.5リットル)飲ませます。
これも大腸菌のアタックを受ける前に初乳を子牛に届ける対策のひとつです。
「最初に粉末初乳を飲ませると肝心の親の初乳を飲まないんじゃないか。。。」
そう思われる方もおられると思います。
しかし30㎏弱で生まれる但馬牛でも、粉末初乳を与えた数時間後には全頭親の初乳を飲んでいます。
感覚でしかありませんが、その後の活力がすごくある気がしています。
今回は②の免疫の確保について書きましたが、親の初乳の大切なポイントは③ホルモン伝達物質の獲得、粉末初乳の大切なポイントは①栄養源の供給だと思っています。
そのため粉末初乳は量がキーになるのかなと個人的には感じています。
この方法がベストかはまだわかりません。
牛飼いは常に牛を見ての正解探し。
1年間続けた時点でまた結果を報告しようと思います。
おたのしみに~。
子牛が生まれたら親の初乳に加えて粉末初乳を2袋追加します。あれもこれもしたら生後初日から経費1万円。黒毛和種はブルジョワ牛です。それにしても、、、キラッキラやな。。。 #初乳は投資 #事故ゼロ pic.twitter.com/Xzf92O3G1J
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) March 24, 2017
子牛を病気から守るために、効果的に初乳を飲んでもらいたいですね。