田中一馬ブログ

肉になるということ

 秋福悠を出荷してきました。

秋福悠はどこにいても寄ってくるような人懐っこい牛でしたが、部屋の中にいる時から押しても引いても頑として動かない子でした。
だから1時間かけて牛がなるべく自分から歩くようにとゆっくりと積み込みをした。
時間をかけるとどんな牛も歩いてくれる。

よく「この先の運命が分かってるんですね。。」なんてコメントをもらうことがある。分かってたら乗るわけがない。

人っていうのは都合よく色々なことを考えてしまう。

しかし牛は人の都合よく動いてくれはしない。だから観察して想像してってのを毎日毎日するのだ。

時間をかけてゆっくり乗せるのはこの牛だから。そういうのも含めての牛飼い。

秋福悠は枝肉で445kgと但馬牛の標準的な大きさだった。まだ切ってないから分からないけど皮下脂肪の薄い背中に張りのある良い枝だと思ってる。

ここからは肉屋として牛と向き合う事になる。屠畜当日はホルモンの処理。格付けは3日後。捌きは来週火曜日から。牛を見て肉を見て蹄を切り肉を切る。今してるどの仕事にも優劣は無いけどさ、全てを見てるからこそ気が引き締まるよ。 

帰ってくると相方の丸福久が1頭だけで座ってるのを見て少し寂しい気持ちになった。

34か月も一緒にいれば情も湧く。ましてや子牛市場で売れないくらい手のかかった子だから他の牛以上に思い入れはある。

だからと言って美味しく食べることが牛への供養なんだと僕は思わない。死んだ牛に出来ることなんて何一つない。生きている間に何ができるか。それだけだ。その先は食べてくれる人に何ができるか。それだけだ。

情は当然ある。だからこそ視点を間違えてはいけないと自戒の念をいつも持ってる。

妻もこんなツイートをしてた。

屠場から帰って牛飼いをし、娘を乗せて夕方再びホルモンを引き取りに行く。

枝熟成、ホルモンの処理、脱骨とお世話になってる「ほくぶ」さん。

枝肉は1週間ちょい熟成するけど、ホルモンはスピード勝負だからね。ホルモンミックスは既にパックして冷凍完了。明日中にはタン、テール、レバー、ハツ、ツラミ、タチギモなど全ての処理を終わらせたいな。

レバー、ハツ、ツラミ、テール

ちなみに娘はタンを食べる気満々。

今日の晩に食べるみたいっす。

なくなったらごめんね。。。笑

 

屠畜の夜は取れたばかりの秋福悠のホルモンでした。

鮮度も味も完璧。これは自信持ってみんなに出せる。って事は今はいいや。今日だけはいいや。ありがとうと思う特別な晩御飯です。

美味しい。クタクタだけど美味しい。

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬(カズマ)

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。
好きなものはカメラ、カレー、コーヒー、純米酒。

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