田中一馬ブログ

循環

ここの所、ずっと何かが引っかかっていた。

それが何かは分からなかったけど、先月、フッと気がついた。

子牛の事故、自分の経営力、牛を見る目のなさ、更に放牧牛肉など色々な事を始めては後手後手になり、資金的に苦しい状態に常に追い込まれていたここ数年。

その中でこの2年は今までやってきた事を次々削ぎ落して、(まだ多いと言われますが。。。)儲ける事に力を入れた。

まあ、それは分娩間隔の短縮や飼料の自給といったコストカットに加え、餌の設計、削蹄先の新規開拓、etc。

誰もが普通にやっていることだ。

その効果は少しずつ見えてきた。

しかし、なぜか気持ちが乗らない。

先が見えて気が緩んだのだろうか。

経営面での良縁や良い話を次々いただくようになったのだが、力が入らないのだ。

力が入らないので上手くいくイメージが出来ない。

何故だろう。

そんな中、先月ふっと浮かんできた言葉が、「澱み」だった。

自分が澱んでいたから。

溜めるばかりで流れを止めていた自分に気がつかず、その違和感だけをちょっとずつちょっとずつ積み重ねてきた結果、体が重くなっていたのだと思う。

例えば放牧や自給飼料の確保は大きなコストカットになる。

僕は元々動物が好きという気持ちがあって、それが牛飼いを志した原因の一つだけど、もう一つの理由として食料を生産するという【人間の命を支える仕事】に魅せられた事も大きい。

だから就農した前年にBSEで子牛相場が大暴落しても牛飼いをやりたいという気持ちは変わらなかった。

「生命を支える農業がこんな事で潰れるわけがない、潰してはいけない。」という思いがあったから、若さゆえの妄想でもそれが根底にあって進んでこれた。

僕が放牧での牛肉生産をしているのもそういった思いが原点にある。

牛は人間が利用できない繊維を消化吸収し、牛乳や筋肉に変える。

更には作物が作られない傾斜地でも牛は食料を生産できる。

放牧や自給飼料で【牛が生きていける】基盤を作っていれば、牛が生きているだけで食料を国内で備蓄する事ができる。

放牧での牛肉生産を形作る事=持続的な畜産の形=『循環』

という理想にも似た思いを常に持ち、現実とのギャップをガンガン感じながら牛飼いをしてきた。

但馬は山に囲まれた谷沿いに集落がある雨の多い地域だ。

北海道のような広大な草地はない。

乾草を取るのも至難の事。

そんな中、今年も但馬中を走り、稲木架けの稲ワラを集めてまわった。

但馬は雨が多いのでピリピリしながら夜通し集めた。

たくさんの方のご厚意のおかげで本当にたくさんのワラが集まった。

でも、僕が集めたワラは例えば北海道で大きなトラクター使って取れば30分くらいで取れる量だと思う。

放牧場にしてもそうだ。

今年、既存の放牧場で大きな事業をしている。

来年度からは一気に但馬中に広げていく計画があり、今動いている。

全てが上手く繋がったら来年には放牧場の面積が30haくらいにはなると思う。(現在は16ha)

30haといっても荒れた山が多いので、手入れするだけでもものすごいお金がいる。

踏ん張らなくては繋げられない。

そのくらいこの30haはこの地域ではかなりの規模の面積だ。

でも、熊本は阿蘇の草地だと23,000ha。全く桁が違う。

しかも、これだけの草地が畜産農家の減少によって使われなくなり荒れてきているのが現状なのだ。

僕がいくら但馬で1ha~2haを確保するために動いて、力を借りて、形を成す所まで持って行けたとしても、食料生産の基盤を支えるなんて恥ずかしくて言えないくらい小さな小さな力でしかない。。。

それでもこの一歩が持続的な社会、循環型社会に繋がると信じて走ってきた。

少しでも可能性のある土地を探して、下調べをして、根回しをして、「確保する事」に全力を注いだ。

その結果、加速的に進んできた。

そんな中で違和感は積み上がってきた。

先月気づいたのはそこだった。

今まで自分が循環だと思ってきた、持続可能だと思ってきた行動が、利己的な物になっており、そこに矛盾を感じていたのだった。

小さな地域で、小さな土地やそこから生える草を、『自分が確保する』という奪い合うような行為そのものが、すでに持続的な考え方と矛盾するものだった。

自分の中に溜めて溜めて溜めて蓄えようという考え方自体がストレスの原因だった。

どれだけ放牧場を確保しようが阿蘇にはかなわない。

自給飼料をいくら集めようが北海道にはかなわない。

だから無駄だというのではない。

循環とは流れ。

これもある、欲しい。

これもある、欲しい!

こんな事を繰り返していても終わりはない。

自分には何もなくていい。

なければ借りればいい。

得たものは渡せばいい。

溜めるのでなく、溜めない事。

借りる事、回す事、流れを常に作る事。

それが生きるという事。なんだと思った。

いくら貯めても、何億貯めても、死んだら次に流れる。

どう生きても流れの中にあるのだが、だからこそ流れを感じて生きたいと思った。

貯めるのでなく、出して流れをつくる。

放棄するのじゃない。

お金と一緒で、稼ぐに稼ぎ、財布のひもはしっかりとし、だけど大事な所では使い、次の流れに乗せる。

これは理想ではなく、現実そのものだと思ったわけです。

さあ、明日から福井県です。

がっつり削蹄してきます!!!

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として様々な農家の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛を中心に長期肥育や経産肥育、放牧牛肉の生産などをスタート。
好きなものは牛肉、漫画、純米酒、ウイスキー。ここ1年はサウナにドハマり中。

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