最終更新日2019.1.8 16:20
牛は宝物なり
こんにちは。
但馬牛繁殖農家のお肉屋さん、田中畜産の田中一馬です。
今から8年前のこと、牛を運ぶ仕事でお隣の豊岡市(旧日高町)に呼ばれたことがあります。
高齢のため牛飼いをやめられるということで、最後の牛の引き取りに僕は立ち会うこととなりました。
おじいさんは「昔は80件あった農家が今は5件にな・・・」と少し寂しそうに、何度も何度も「気をつけて運んでくれ」と僕に言っていました。
牛を積む直前にはプロのカメラマンが来られ、「牛と記念撮影をするんだ。一緒に撮ろうか。」と何故か僕まで一緒に撮ってもらうことに。。。
こういった離農する農家さんは年々増加しており、決して珍しい事ではありません。
それでもやっぱり離農って慣れない。
1軒1軒忘れられない。
僕たちが食べる牛肉は牛の命だけれど、後ろにはその牛を飼っている人がいる。
牛小屋に書かれていた「牛は宝物なり」
何十年と牛を飼ってきた牛小屋にしては比較的新しい筆跡で書かれた言葉。
あのおじいさんは、どういった気持ちでこの言葉を書いたんだろう。
面識のない農家さんでしたが、8年たった今でもずっと僕の中から消えません。
家畜って野生に比べて可哀想なイメージを持たれる方が多いですが、僕は人と関わりのある家畜が好きだし家畜と関わる人も好き。
伝えたいのは「どのお肉がおいしい」とかではなく、お肉となったそれぞれの牛やそこに関わる人なんだと思う。
牛や人との関わりを食べる人とつなぐ事。
それが僕の目指す忘れられない晩御飯を作っていくんだと思うんです。