田中一馬ブログ

熊波系統の再構築①

こんにちは。

但馬牛の繁殖・削蹄師・放牧牛肉(肉屋)の田中一馬です。

3月14日、美方郡和牛育種組合による熊波系統再構築にむけての現地検討会が行われました。

但馬牛の3系統

黒毛和種の3大系統の一つ但馬系。

その純血種である但馬牛には3つの系統があります。

中土井系熊波系城崎系です。

但馬地域は山に囲まれた谷沿いの地域で、それぞれの谷で昔から閉鎖的に交配が行われてきました。

その結果、それぞれの谷ごとに優れた特徴を残す血統集団ができました。

この血統集団を「(つる)」と言います。

美方郡東部の「あつた蔓」、西部の「ふき蔓」、城崎郡の「よし蔓」、養父の「やぎだに蔓」、出石の「いなきば蔓」など、兵庫県北部の但馬地域では様々な蔓牛がうまれ、全国の和牛改良に大きく貢献してきました。

そしてあつた蔓からは「中土井系」、ふき蔓から「熊波系」、よし蔓から「城崎系」がうまれ、この3つの系統をもとに但馬牛は改良を続けてきました。

偏りすぎた系統

各系統にはそれぞれに特徴がありました。

たとえば

このお互いの良い所を引き出すために系統間での交配が図られました。

こういった系統間交配は市場性の高い子牛を生産する一方で、何代にもわたり血が混じり合うため独立した系統の維持が出来なくなるデメリットがあります。

特に25年前の牛肉オレンジ自由化をきっかけに肉質の評価が高い中土井系が人気となり、但馬牛の系統の偏りが顕著になりました。

主流となった中土井系は、時間の経過とともに淘汰選抜が進み、改良が進んでいきます。

一方で熊波系、城崎系の種雄牛は中土井系の人気に押され使う人が殆どいません。

改良スピードも遅くなり、中土井との能力はひらくばかり。

市場性だけで見れば熊波系や城崎系は淘汰されるべき系統。

しかし、それができない事情が但馬牛にはあります。

熊波系再構築の必要性

但馬牛は兵庫県内だけで育種改良をする「閉鎖育種」によって成り立ってきました。

そのため近交係数が高くなりやすく、虚弱で飼いにくいといった欠点を持っています。

こういった欠点を抑えながら但馬牛を残していくためには、中土井だけではなく熊波系や城崎系などの血を取り入れて近交係数を下げることが必須になります。

しかし、今の能力の低い熊波系では市場性が無いため使えません。

新たな熊波系を構築するために、熊波の血の強いものをピックアップして改良を進める必要があります。

しかし、何が熊波の強い牛なのかもわからない状態でした。

ジーンドロッピングによる但馬牛の再分類

そのために取り入れられたのがジーンドロッピングという方法です。

これは今いる但馬牛の父母をそれぞれ祖先までさかのぼり、その牛が各始祖牛の影響をどの程度受けているのかでグループ分けする方法。

G1〜G8までの8つの系統に但馬牛を分類することで、熊波系の血の濃いグループ(G8)を増やしていくことをが理論上可能となりました。

これにより消えかかっていた熊波系が再構築されました!

とはまだまだいかないんですよね。。。。

熊波系の再構築していくには遺伝的な選抜だけでは不十分。

分類されたといえども未だ熊波系の血は薄く、外観上の特徴もバラバラなのです。

遺伝的な選抜の次には「熊波系とはこういう牛だ!」という特徴を持った牛を選抜していく必要があります。

(つづく)

(熊波系の現地検討会の様子)

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬(カズマ)

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。
好きなものはカメラ、カレー、コーヒー、純米酒。

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