田中一馬ブログ

現場後代検定牛と10月子牛市場

但馬家畜市場10月子牛市場でした。

我が家は牛市での出荷は0頭。

少なーーーー!!キャッシュフローーーーー!!!と叫びたい所だけど、今回は牛市後の斡旋会で「現場後代検定牛」を販売してきました。

現場後代検定牛とは一言でいえば【種雄牛の能力を測定するために生産された牛】です。

一般的に和牛の種雄牛は産肉能力を測定するため若い時期に産子を取ります。その産子を肥育し枝肉を見て種雄牛の選抜をしていくことで肉牛は改良されている。これを現場後代検定と言い、その検定に使われる産子を但馬では年一回臨時市場(斡旋会)を開いて集めているんです。

我が家からは悠哲土井のメス1頭、山長土井は去勢1頭メス2頭。計4頭の検定牛を出荷させていただきました。

後代検定用の牛は競りとは違い、発育によるランクによって価格が決められます。

Aランクは市場平均価格(税抜き)の5%上乗せ、Bランクは市場平均、Cランクは市場平均の5%下げ。そんな感じ。

今回は先月同様に市場平均は大きく落として来るだろうなと見てました。
神戸ビーフでも枝肉単価が3,000円/kg切る牛も出てきている。
ただ、それでも300頭を切る上場頭数の少なさから、去勢は落ち値(税抜き価格)で83万、メスで85万と予想。
繁殖素牛を2〜3頭買う気で市場に向かいました。

と言うことで早速市況を見ていきましょう。

但馬家畜市場10月子牛市場

雌 132頭 最高1,571,900円 最低619,300円 平均967,108円 前年同期比10,330円安。 先月比55,758円高。

去勢 175頭 最高1,161,600円 最低350,900円 平均920,097円 前年同期比283,708円安 先月比9,563円安

総平均940,310

税抜きだと去勢836,000円、メス879,000円と大体予想した通り。

でもこの子牛価格が今の枝肉相場から見て適正かといえばそうじゃない。

オリンピックまではとか、オリンピックが終わっても万博があるとか、僕も含めてみんなが希望的観測ばかり言ってきた。でも先のことは誰も分からないって事だ。そもそもまだまだ子牛高いし。「安くなった」なんて言ってたらぶん殴られるよね。

相場に一喜一憂する前にもっとやる事がある。強い子牛を生産する事も一つだし、今後の改良を考えるのも一つ。

現場後代検定牛

今回の現場後代検定牛は悠哲土井と山長土井でした。

悠哲土井は昨年廃用となった但馬牛の2枚看板のうちの1頭「芳悠土井」の後継牛。山長土井は肉牛タイプの「芳山土井」の後継牛。

兵庫県の但馬牛は閉鎖育種といって他県の黒毛和種の血を入れずに改良されています。これは日本で但馬牛だけ。その兵庫県の中でも僕の住む美方郡では美方郡閉鎖育種といって美方郡内の牛のみで改良を行なっているんです。

このやり方については賛否ありますが、美方郡の血統が但馬牛の存続に必要であるということは間違いない。しかし、現在の美方郡を支えている芳悠土井はすでに廃用となり精液の配布もあと1年で終わります。肉牛タイプの芳山土井の後継牛であった山勝土井も廃用となり精液配布も出来ない。そんな中でこの2頭が僕は最後の砦だと思っている。この2頭が成績を出さないと美方郡はかなり厳しい状況に追い込まれる。

そんな美方郡の今後を担う検定牛を見に来た美方郡の牛飼いは殆どいなかった。集められた牛の選定もバラバラで、本気でこの2頭を作る気があるのかと危機感を持たずにはいられなかった。相場が下がった云々じゃないよ。今気にするべきはこっちだろ。

牛を見た感じ悠哲土井は難しい気がしたな。山長土井は良くなると思って見た。あくまで僕が見た感想です。あとは肥育してくれる農家さんと試験場に任せます。

出来ない事を嘆いても仕方ない。出来ることを模索しての繰り返しだね。

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として様々な農家の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛を中心に長期肥育や経産肥育、放牧牛肉の生産などをスタート。
好きなものは牛肉、漫画、純米酒、ウイスキー。ここ1年はサウナにドハマり中。

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