田中一馬ブログ

育むのは牛、死なすのは人。

先日、予定日より1週間早いお産があった。

すでに部屋は満室。

陣痛がきてるのでのんびりしている時間はない。いつも僕はギリギリだ。

牛は強いからそうそう死んだりしない。

でも、ちょっとしたズレで死なせてしまうこともある。

まずは産室を作るために牛たちの大移動です。

親牛は鼻を持てば簡単に移動できる。

一番動かないのは生後半年くらいの子牛。

反抗期だね。僕なんて簡単に引きずられてしまう。。。

小さな子牛はロープで引っ張ると転けてしまう。だからダッコでダッシュ。

めんこいっしょ。。。笑

ステージで大きさも性格も全然違う牛たち。

ついつい僕が育んできたと思ってしまう。

でも違う。

成長したのは牛自身、僕は側にいただけだ。

生まれるときに死んでしまうのは牛のせいじゃない

お産とは病気ではない。

基本的には人の介助はいらないものです。

しかし、何があるかわからないのもお産。

昨年末はこんなことがあった。

「蹄は上を向いて逆子に見えるけど、これ、前足だ。。。イナバウアー?いや、頭がない。。。やばい、胎盤が剥がれてきてる。どうなってんだよ!!子牛が窒息してしまう。やばいやばいやばい。。。」

頭位の側胎向に側頭位が合体した感じの体位だった。

 

この時は焦った。。。

顔の位置は分からないし、ようやく見つけたら鼻は産道と反対、お腹は上向き、子牛はデカすぎ。

絵じゃ伝わらないけど、とても自然分娩では出なかった。

結局無理やり押し込んで顔を直して身体の向き変えて引っ張ってなんとか無事に出すことができた。

一方、この子は「スタンダードな逆子」だった。

逆子と聞くと大変な気がするが、タイミングさえ間違えなければ難産にならないことも多い。

子牛が小さいおかげでするりと出た。

でもあの時昼寝していたらアウトだったかもしれない。。。

生まれてくるまで育むのは母、生まれてきてからは子牛自身。

牛は自ら命を絶つことはしないから、もしその過程で牛が死ぬのなら、それは牛のせいじゃない。

育むのは牛、殺すのは人

牛の出産をSNSに投稿すると非常に反応がいい。命を扱う立派な仕事に見えるんだと思う。でも、書いてきた通り僕は何も扱っていない。

子牛は母牛が胎内で育てる。そしてそれと同時に子牛自身が成長していくもの。

僕は部外者だ。

畜産は生かし殺す仕事。

そういえば少し聞こえはいいけれど、屠畜まで死なせないのが僕の仕事なのかもしれません。

死ぬリスクを抱えても高品質を目指すという考えもあるけどね。

でもどちらも同じような気がしてる。

育むのは牛自身の力、死なせるのは管理者の責任。

奇形などの先天的なものも含めてそう思う。

この子は引っ張り出して30分で乳を飲んだ。

それは僕の介助ではなくこの子自身の力。

そこを誤解しないようにしたいな。

気がつけば子牛の死亡事故ゼロが17ヶ月目に入った。

偶然に助けられてる部分は多いけど、それら全部を味方にして進んでいきたい。

いろんな失敗をしてきたから思う。

こんな当たり前がありがたいってね。

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬(カズマ)

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。
好きなものはカメラ、カレー、コーヒー、純米酒。

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