田中一馬ブログ

サシバエ

サシバエってご存知ですか?
夏から秋にかけてやってくる血を吸うハエのことです。
大きさは5㎜程で見た目はイエバエのような姿。
しかしよく見るとイエバエに比べ羽がとがっており、二等辺三角形のようなフォルムが特徴です。
そしてなによりこの「くち」
イエバエのブラシのような口ではなく、血を吸うため針のようになっています。

このサシバエに刺されるととにかく痛い!!
僕も何度もやられていますが、とまった瞬間に針を刺すので、身構える間もなくただただ痛いのです。
我が家の場合、サシバエは田んぼから一斉にやってきます。
だから田んぼに近い牛は、足にも胸にも1日中サシバエだらけ。。。
見ているだけでい痛々しいです。(この写真に写っているだけで30匹ものさしバエが確認できます。)

牛は落ち着いて寝ることもゆっくり餌を食べることもなく、四六時中痛いものでチャカチャカ動きます。
これだけでもサシバエによる牛のストレスや経済的損失がとても大きいことはすぐに想像ができます。
ただ、サシバエの駆除はなかなか難しいのです。
イエバエのように誘引剤(餌で釣ってやっつける)が効くわけでもなく、煙霧消毒の機械で殺虫剤を散布しても一時しのぎでしかない。
サシバエは草の中で休息しているため、牛舎周りの草を刈ることで休息場所を無くし、発生を抑えることもできます。
しかし、いくら牛舎まわりの草を刈っても隣の敷地は田んぼ。。。これではいくらでもやってきます。
毎年毎年痛そうにする牛を見て、今年はサシバエネットを導入することにしました。

サシバエネットには防風ネットを使います。
一般的な防風ネットは穴の大きさが4mmなのですが、それではサシバエが入ってきてしまうことがあるため2mmのネットを使います。
また、通常はネット幅が2mのロールしかないのですが、間口の高さに合わせたものを特注で作ってもらいました。

網の目を2mmにすることでサシバエは入ってくることができません。

ネットには上下にずらーっとリングをつけてもらい、上にはワイヤーを這わしてカーテンにしました。

カーテンが風で持ち上がらないように、カーテンは間口の高さより1mほど長めにして、カーテン下のリングにはチェーンをつけて重しにしました。
(リングがない場合はカーテンに直接結束バンドとチェーンを取り付けると簡単です。)

実はこのサシバエネットは兵庫県の畜産試験場がすでに結果を出しているもので、酪農の現場では全国的に普及しつつあります。
削蹄先の肥育農家さんでも使っているところがあります。
この2mmネット、効果は素晴らしく高いのですが欠点もあります。
それは網の目が細かいためホコリ等で目詰まりして通気性が悪くなるということ。
そのため年に数回掃除などのメンテナンスが必要だということ。
通気性が悪くなると、夏場の暑い時期などは牛にとってサシバエ以上に負担が大きくなります。
これが僕にとってサシバエネット導入のネックになっていました。
そこで壁にネットを直接張り付けるのでなく、カーテンのように可動式にすることで開閉時にホコリが少し落ちるようにしました。
更にカーテンの長さに余裕を持たし、チェーンで重しをしてカーテンを「斜め」に垂らすことで、雨によってネットの掃除ができるようにしました。
大雨のあとはカーテンが新品のように綺麗になっています!!
また、ワイヤーに通してあるので冬は外して、春からまた付けることも簡単です。
2mmネットのカーテン、これはとてもいいですよ!!
風が吹いてもチェーンがあるのでこんな感じ。


中から見るとこんな感じで斜めになっています。

今回は様子見もあり牛舎の1面のみの施工でしたが、来年は他の面も設置しようと思っています。
さて、2mmの防風ネットはとても良いことは分かっていたのですが、それとは別に6mmの防風ネットも試験的に取り付けてみました。


6mmのため通気性はとても良く、壁に貼り付けてもホコリもあまり付きません。
ただ、6mmと目が大きいためサシバエはネットを通り抜けることができます。。。
実はこのネットは「オリセットネット」というものでネットの原材料であるポリエチレンにピレスロイドという防虫剤を練りこんであります。
これは海外でマラリア予防に蚊帳として使われているもので、蚊帳の糸に練りこんだ防虫剤が殺虫や虫の忌避効果を5年間持続するというすぐれもの。
本当に効果があるのかはしばらく使ってみないとわかりませんね。
6mmなのでサシバエは簡単にネットをすり抜けます。
ただ、ネットを通るとき素通りというわけには行かず一旦ネットに止まってから網の目を潜ります。
この時普通なら網に止まって休息するのですが、このネットの場合は止まった矢先に足をチカチカ動かし落ち着かなくなります。
おそらく足から殺虫成分が神経に働いているんだと思います。
効能が持続するのかはまだよくわかりません。


数日後、サシバエとオニヤンマが死んでいました。。。
カマキリとクモとカメムシも死んでいました。。。

ちょっと怖いですね。
現在、この2mmの防風ネットと6mmのオリセットネットと設置して2ヶ月近く経ちました。
牛舎全面をネットで覆っているわけではないので牛舎内に依然としてサシバエはいます。
しかし、あれだけ親牛の足に張り付いていたサシバエが今は1匹もいません!!!

牛舎内にサシバエはいるけれども牛の足についていないということは、今まではとんでもない数のサシバエが牛舎に入っては出て入っては出てを繰り返していたということです。
その大量のサシバエが入れ代わり立ち代わりこんなふうにお腹がはちきれんばかりの血を吸っていたのかと思うと。。。。ぞっとしますね。。


結論。
サシバエネット(オリセットネットはまだ判断しかねます。。。)は本当におすすめです!!
特注の2mmネットは2枚で20,000円ほどでした。
牛がおちついているのって、いいもんですね。

実にいいもんです。

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として様々な農家の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛を中心に長期肥育や経産肥育、放牧牛肉の生産などをスタート。
好きなものは牛肉、漫画、純米酒、ウイスキー。ここ1年はサウナにドハマり中。

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