最終更新日2019.1.8 16:19
畜産の新規就農を夢で終わらせないために。
ゼロから農業を始める。
そんな新規就農に憧れを抱く人も多いのではないだろうか。
農林水産省の統計によると、2018年度の新規就農者数は約60,000人。
そのうちゼロから畜産で起業する人は30人にも満たない。
その割合は0.05%。
畜産の新規参入は非常にハードルが高い。
その理由は初期投資額の高さだ。
比較的初期投資の少ない和牛繁殖農家であっても、専業で食べていくには3,000〜5,000万円の投資が必要。
そんな資金をキャッシュで持っている人は通常いない。
大学の新卒者が借りられる額でもない。
しかも資金があるから畜産業をスタートできるかといえばまた別の話なのだ。
たとえ土地を購入することができても、近隣住民の反対にあって牛舎を建てられないという話は非常によく聞く。
お金がないとできない。
でもお金だけでもできない。
畜産の新規就農を夢で終わらせないために
僕は2002年に畜産農家として新規参入した。
知り合いでも非農家から畜産業を始めた人は何人かいる。だから僕は決して「できない」とは言わない。
ただ、『こうやったらできるなんてキット』なんてものは知らない。
みんなそれぞれが自分の持っているものと状況の中で事業を起こす。人の数だけやり方がある。
ちなみに僕が起業できたのは縁と運に恵まれたから。たまたまです。自分一人の力ではとてもできなかった。
その上であえて言わせていただくならば、縁と運は待ってても絶対来ないということなんだ。
僕のところには牛飼いをしたいという子が全国からたくさん来る。
話を聞くとほぼ100%の人が現実を知らない。認識が甘い。
でもこれは経験していないから当たり前のこと。
僕だって未だ甘ちゃんだ。人のことを甘いなんて言える程大したことはしていない。
大切なのは認識の甘さじゃなく行動量です。
例えば僕のところに来る人の8割が質問をほとんどしない。
何かヒントがもらえると思っているのかもしれないが、課題が見えない中では僕も答えようがない。
行動しないと課題も見えない。
そう言うと「何を質問したらいいのかわからなくて。。。」という答えが返ってくる。
経験したことのない世界のことを一人悶々と考えていても妙案なんて浮かぶわけがない。
動いてこそ現実が見え、現実が見えるからこそ次の手を考えられるんです。
今日は加西市から楓ちゃんが来てくれた。
ずっとSNSで繋がっていて心安い子だけど、僕は「大丈夫だよ」とか言いません。
質問に答えるくらい。
今日は@UsiKaede ちゃんが遊びにきてくれました。会うのは播磨農高での削蹄以来かな。僕のとこには牛飼いになりたい子がたくさん来ます。みんな応援したいから極力受け入れもする。でもね「大丈夫だよ」とか言いません。あと質問されないと喋りません。マジ沈黙です。でも応援してるからね。頑張ろう! pic.twitter.com/paT8BRRiNp
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) May 22, 2018
偉そうに上から言いたいことも言いました。
でもこうやって来ることも一つの行動。
行動すると一人では見えなかった世界も見える。
別にね、起業することが偉いわけでもなんでもない。
畜産経営者よりよっぽど優秀な牧場従業員を何人も知っています。
言いたいことはどんなポジションにいようが、やりたいことがあるなら動くしかないだろってこと。
甘くても稚拙でもいい。むしろ稚拙なのは当たり前。
そして動かないと形にならないのも当たり前です。
縁も運は結果。毎日考えながら動くだけ。
それは牛飼いを始めてからもずっと同じことだから。
畜産の新規就農をしたいならとにかく動こう。
一人で畜産業は起業できない。
でも、一人でもやるという気持ちを持って動く。
動きながら思いを伝え続ける。
自分の事業なんだからね。