田中一馬ブログ

放牧6次産業界の問題は批判による自己肯定とそれによる孤立。

こんにちは。

田中畜産の田中一馬です。

今日は九州大学の後藤先生と農畜産業振興機構の廣垣さんが取材で我が家にお越しくださいました。

後藤先生はすごく久しぶりでしたが、変わらずエネルギッシュで素敵な先生でした。

咲が2階から後藤先生の頭の上におもちゃを落としたり、晃生が「おっさん!ちょっと見て!!おっさん!」とか暴言吐いていましたが、大人の対応で。。。先生、すいませんでした!!!

後藤先生は九州大学でQビーフという草で育てる黒毛和種の生産をされています。

粗飼料での黒毛和種の牛肉生産に取り組まれており、ぼくもずっと尊敬している先生です。

今回は「畜産の情報」という雑誌の取材でお越し頂きました。

我が家の取り組みについてお話させていただいたのですが、その中で僕が話した内容を3回くらいに分けて書いていこうと思います。

飼い方は価値になるか?

放牧や国産飼料での牛肉生産をする際に「飼い方」を価値にしようとする傾向があります。

「既存と違う」ってことは相手に説明しやすいからです。

また、一般的なやり方と異なる飼い方をする背景には、各々の強い思いもあります。

だからこそそれを価値にしたい気持ちも分かります。

実際、放牧で牛肉を生産するなんて国産牛肉の0.01%もありません。

まだまだ開拓されていない市場であることは間違いありません。

放牧をすることで

・国内の餌で生産する牛肉=安心安全

・共益リノール酸など機能的成分が多い。

・穀物の使用量を減らせる。

・牛にとって快適 などなど

色々なメリットがあると言われています。

僕も牛肉販売を始めた当初はそんなことを宣伝文句にしてきました。

メリットだけでなく

・既存の牛飼いは狭い場所で不自然に牛を太らせて不健康

・世界では飢えている人がいるのに人間の食べられる穀物を牛に食べさせるのはおかしい。

・牛舎飼いは1頭あたりの面積が狭いため糞尿の処理において環境負荷が大きい。

など、放牧は様々な問題を解決する特効薬のような使われ方もしています。

こういった極端な考え方は過激でインパクトがあります。

しかし例えばすべての農家が放牧で牛肉や牛乳を生産すると、土地に制約のある日本では牛の生産頭数は激減し結果的に食料の不安定化を招きます。

ミクロでは正しくてもマクロでは通用しないといった事は世の中にたくさんあります。

そもそも「これこそが完全な牛肉生産のあり方」なんて無いんですよ。

そんなものがあれば既にそうなっています。

確かに「放牧」でのメリットはあり、価値にもなります。

しかし、それって『僕だけの』価値なのでしょうか?

その牧場の価値ですか?

ニッチな市場だから単に今取り組んでいる人間が少ないだけ。

少ないからこそキーワードを価値として使えているというのが現実なのです。

その価値ってあなただけのもの?

僕自身の話でいえば

放牧で牛肉を生産することで世の中がよくなると思っていました。

既存の輸入飼料に依存する飼い方ではなく、放牧での牛肉生産の方が環境にも優しく、世界情勢にも左右されず、安定的に食料を提供できる。

荒れた耕作放棄地や山林の有効活用ができる。

確かに、そんな一面もあると思います。

しかし、それで自分のお肉が選ばれるかといえば別の話です。

例えば我が家は頑張っても年間5頭の牛肉生産が限界です。

放牧で但馬牛を仕上げるやり方は世界中でここだけ。

但馬牛というキーワードは大きく、キーワードでの競合他社は現在いません。

ただ、放牧で仕上げているといっても経産牛ですので、子牛を産み育てる時期は胎児の栄養や授乳の栄養補給のために穀物を与えている時期もあります。

「出荷8か月前までの仕上げの期間は穀物給与をせず放牧のみです!!」なんて言ったところでストイックな放牧牛肉ではありません。

正直な話、僕もストイックな放牧牛肉に惹かれた時がありましたし、実際に生産していました。

だけど今は重要視していません。

仕上げ放牧の放牧敬産牛肉も完全グラスフェッドの放牧牛肉も機能性や味において差を感じないからです。

ストイックな飼い方にこだわるよりももっと大切なものに気づいたから、ぼくは放牧敬産牛肉をこれからも自信を持って生産していきます。

もし僕が放牧といったキーワードのみにすがっていたら、外的要因で簡単につぶれてしまうと思います。

5000頭の資本力のある肥育農家さんが、片手間で年間30頭完全放牧で牛肉生産を始めたらどうでしょう?

片手間の牧場に『キーワード・生産量』ともに簡単に負けてしまいます。

実際、放牧での牛肉や牛乳生産だけなら素人でもできます。

山に放してほっときゃいいんだから。

そんな飼い方にすがっている時点でぼくはダメだと思う。

放牧はただの手段だから。

こだわってもいいけど、誰でもコピーできることって価値でもない。

放牧というキーワードでやっていけるのはニッチだからです。

しかし、いつまでもその市場がニッチであるとは限りません。

声高々に既存の業界の否定をする人ほどうまくいきません。

放牧牛肉や放牧酪農業界のいちばんの問題点は同業他社ばかり見ているということ。

そして競合他社を否定することで孤立してしまっているということ。

『差別化』に躍起になっている限り発展はありません。

ってこれ僕の失敗例ね。

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農畜産機構の廣垣さんと諸星大二郎の話で盛り上がった時が、僕のテンションが一番高かったことは内緒。

暗黒神話をジャンプ時代から見てたって、スゲー!!!

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但馬牛の繁殖から放牧牛肉まで。

田中畜産のHPは『こちら

放牧敬産牛肉「きょうふく」のお肉、第3弾は2月6日AM10:00に販売スタート

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田中畜産 代表 田中一馬

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として様々な農家の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛を中心に長期肥育や経産肥育、放牧牛肉の生産などをスタート。
好きなものは牛肉、漫画、純米酒、ウイスキー。ここ1年はサウナにドハマり中。

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