田中一馬ブログ

牛飼いが儲からない!!そんな時は整理整頓から始めよう!!!

COW HAPPY NEW YEAR !!!
但馬牛繁殖農家のお肉屋さん、ときどき削蹄師の田中一馬です。
2017年がスタートしましたね~。
2年前から子牛価格は高騰に次ぐ高騰で、和牛業界は過去にないくらいの好景気。
さすがに僕も勘違いしだしています。ヤバいね。。。。
どんなに高値相場でも、牛が仕合わせでないと牛飼いは仕合わせにはなれない。
これは比喩でなく、マジ話です。

COWHAPPY、牛が仕合わせでないと牛飼いは仕合わせになれない。



でもね、牛が仕合わせになるには人がしっかりしないといけません。

今日は僕より若手の和牛繁殖農家、しかも経営に行き詰って何から手を付けていいのかわからない人に向けて書いていきますね。
儲かってる農家は読まなくて大丈夫です!!!!!

上手くいかないのは後手に回っているから

8年前、我が家は赤字体質でした。
新規就農で大きな負債があったことも原因でしたが、何より牛の事故が多かった。
5年前に大きな事故が相次ぎ、とどめを刺すかのような売り上げ減。
全く先が見えなかったし、倒産も覚悟しました。
毎日が怖かったし寝られなかった。
何故こんなにも利益を出せなかったのか。
子牛相場の暴落、餌の値上がり、為替、枝肉価格、BSE、子牛の事故、、、
それっぽい原因はいくらでもあげることができます。
でも、一番の原因は後手に回っているから。
これに尽きると思う。
一般的に後手に回るケースには、2つのパターンがあります。
①受け身でいる場合
②分不相応に突っ走ってる場合です

①受け身でいる場合

受け身でいると後手に回るって、あたりまえですよね。
繁殖農家は子牛市場での販売が売り上げのメインです。
だから市場でいかに高く売るかって視点ももちろん大切。
その上で、市場に依存しているって自覚が必要だと思う。

値段の差はあれども、市場に出せば必ず牛は売れます。


現在のような子牛相場では受け身であっても利益を上げることは出来ます。
市場に出せば利益が出る。
しかし、いったん相場が暴落した際には右往左往をするしかありません。
市場に出すことが駄目なのではなく、①この仕組みの中でも先を見ること
そして②そのために出来ることを模索すること
自分の目指すあり方が決まっていれば、ありとあらゆる分野で改善はできます。
美方郡閉鎖育種といった改良方針の在り方だってそのひとつ。
何が正解かなんて誰にもわかりません。
ただ受け身でいても、自分が求めるものは得られないって僕は思っています。

②分不相応に突っ走ってる場合

もう一つの後手が、自分の立ち位置を理解していないケースです。
これ、まさに僕の事でした。
リスクを負って挑戦することは、とても大切なことだって思います。
やってダメならやめればいいだけ。
でもね、引き際の判断が出来なくなってしまう事があるんです。
自分の在り方に固執して、あれもこれも手を出した結果、いつの間にか追われる身になってしまう。。。
いくら積極的に動こうが、自分が見えていないと後手に回ります!!
受け身でも後手に。
分不相応に突っ走っても後手に。
こうなるとまさにドツボ。
こんなふうに後手後手にならないようにするには、自分の心に余裕があることが必要です。
これが僕は苦手。
何故いつも追い込まれてしまうのか。
それは、物事を考える順番が違っていたからでした。

物事は順番で考えよう

後手後手に回っている時は、大抵が目の前の問題点を改善しようとします。
しかし、目の前におこっている問題はあくまで結果。
原因を改善しないことには問題の発生はずっと止まらない。。。

問題解決は目先ではなく原因から


そんな時に気付いたのが
①整理整頓→②見える化→③対策という順番の大切さでした。
整理整頓も、見える化も、対策も、それぞれ一つ一つが当たり前の概念。
大切なのは順番です!!
例えば、過去にこんなこんな笑えない状況がありました。

病気が蔓延する。

治療に追われ、牛が見れなくなる。

病気の牛がますます増える。更に治療に追われる。

消毒を徹底する

追い付かない

予防に目が向く

すでに蔓延。。。

これ、一つ一つの工程は間違っていなくても後手後手になる典型的なパターンです。
風邪の対策が問題なのではなく、ここまで蔓延させてしまう牛群の弱さが問題。
母牛の状態から見直していかないと根本的な解決にはつながりません。
①今の自分の現状の整理

②問題点の把握

③改善、対策

この順番が大切。
牛のために何かできないかって試行錯誤することはとても大切。
だけど、自分の事が見えてないのに牛の事を考えるなんて無理です!!
上手くいっていないと思ったときほど、今の自分の現状が見えていないことが多い。
あれ?っと思った時は少しこの順番を意識してみてくださいね!!

整理整頓と見える化には月別の損益計算書(PL)が最適!!

そうは言っても「整理整頓なんてできるか!!!こっちは必死なんだよ!!!そんな余裕あるわけないやろ!!!!」と、以前はずっと思っていました。
それでもやっぱり、そこで立ち止まって整理整頓をする事はすごく大切だって思うんです。
整理整頓は心にゆとりを作る作業だから。
お金に困っていた頃、僕はとにかく削蹄を頑張りました。
その日その日に現金収入があるから。
だけど、そればっかりやっていても経営は改善しません。
現金は入っても追われている原因に手を入れていない。
ゆとりなんて生まれるはずもなく、ただ今まで以上に追われる日々でした。
そこで始めたのが月別の損益計算書(PL)の作成です。

まず過去5年分のPLを月別でつくります。
それを平均することで、だいたいの月ごとのお金の流れが傾向として見えてきます。
どの時期にお金が足りないのか、いつまでにどれくらいのお金がいるのか。
ザックリとわかります。
そしてそれをベースに、月ごとの中期経営計画(PL)を先3年分作ります
これ、超オススメです!!!!
例えば母牛の空胎平均を80日にしたとき、1頭1頭の牛たちが来年の何月に子牛を産むのかが出てきます。(分娩予定日が決まっているのでそこから80日+285日すればいい。)
すると翌年何月に子牛が何頭販売できるかも見える。
3か月までの子牛だと餌代は1日1頭○○円くらいかな、その時期の親牛の餌代は泌乳期だから○○円、でもこっちの牛は6か月齢になっているから子牛の餌代は○○円に上がってて、その分この子の親牛は維持期で○○円、あ、この時期だともう離乳できているから子の親牛は放牧に出して。。。。。
こんなふうに単なる平均的な数字のはめ込みではなく、超リアルな現場をイメージして「その固有の牛1頭1頭の各月ごとの経費」を出していく。
ハンパなく面倒くさいけど、こういったことを一つ一つやっていくんです。
すると、来年の自分の姿が数字となってめちゃくちゃ見えてきます。
これをすると、空胎期間がどのくらい必要なのかも逆にわかってくる。
我が家は80日(1年1産)じゃ間に合わない、60日にしなくちゃとか。
その為に妊娠末期の飼養管理から変えようとか、分娩後40日ですべての親牛を検診しようとか、妊鑑は30日で必ず1回目をやろうとか、数字で見ると行動が具体化できるんです。
そうやって作った計画と現状のずれを1か月ごとに見直します。
申告の時だけの決算ではなく、毎月決算。
和牛繁殖って資金の回転が非常に遅い業種。
子牛が生まれ、発情が来るのを2か月以上待ち、種をつけて10か月待ち、生まれてから8か月後、ようやく子牛市場でお金になります。
すべて順調に種が付くものではないし、生き物だから事故もある。
2年近い期間の中で様々な環境要因の変化もある。
だから月別の経営計画なんて普通は絶対立てません。
机上の空論だもの。
しかし、実績をベースにリアルな数字で作った月別PLは、販売までに時間のかかる畜産経営だからこそ非常に有効だって僕は思っています。
実はこれ、首が回らなくなってどうにもならないときに信用金庫の友人が伝えてくれたアドバイス。
この過程があったからこそ、僕は絶望的な状況から少しずつ改善することが出来ました。

但馬信金の宮垣さん。こう見えて同い年っす!!


不確定要素が大きい業種だからこそ、リアルな現状把握は指針となる。
数字は超便利な道具です。
PLを作ろうが作らまいが、結局やらなきゃいけないことは一緒。
事故率を下げる、分娩間隔を短くする、無駄な投資をしない、予防に早期発見、環境の整備。。。
大切なのは自分の行動ひとつひとつが、どう数字として帰ってくるのか実感するという事。
現状を把握するという事です。
これも整理整頓、そして見える化の順番なんです。

見えるからこそ対策が打てる

頭の中を整理整頓して、見える化で自分の中で落ちた時に、初めて改善点を考えることができる。
何に無駄があるのか、何を削ればいいのか、どこに投資するのか。
これは牛舎の中でも同じ。
散らかっている牛舎だと問題点に気が付かない。
ちょっとしたことでも「まあいいか」と後回しにしてしまうから後手後手になる。

牛舎がすっきりしていると牛も見れるようになります。


整理整頓はまあいいかのハードルをあげます。
そして頭の中をすっきりさせてくれる。
「もう何から手を付けたら良いかわからない。。。」となる前に、普段から整理整頓していけたらいいですね!!!
 

押忍!!!!



って、散らかってるよーーーーーーー!!!!!!

机の上、わやくちゃだよーーーーーーーーー!!!!!
以上散乱する現場からお伝えしました。
これからマジ片付けます。
押忍!!!!

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として様々な農家の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛を中心に長期肥育や経産肥育、放牧牛肉の生産などをスタート。
好きなものは牛肉、漫画、純米酒、ウイスキー。ここ1年はサウナにドハマり中。

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