田中一馬ブログ

仲介業者を挟まなければ利益は上がるのか?

Twitterで面白い質問が来た。

突然失礼いたします。

はじめまして。
〇〇大学〇〇部〇年の〇〇〇〇と申します。

(中略)

肥育農家さんの廃業率が上がっていることへの対策として、私たちは「肉ECサイト(お肉限定通販サイト)」の作成を考えました。

肥育農家さんが肉を下ろすときに仲介業者を挟むより、直接お客さんに販売できる場を提供できれば、その分手数料が下がって利益が上がると思います。

ですが、身近に肥育農家さんがいなく、実際のところどうなのかを聞きたくDMをさせていただきました。

▼質問させていただきたいこと

・肥育農家さんは何が原因で経営が圧迫されているか
(ネットで調べた結果は、①高齢化による力仕事の難化、②試料の価格高騰でした)

・仲介業者の手数料
仲介業者を挟まず直接届けるのと、挟むのとでは、どのぐらい収益が変わるのでしょうか?

・卸業者さんとの契約形態
一つの卸業者さんと契約したら、
他の人に販売するのは禁止されているなどの「縛り」はありますか?

・お肉に限定した通販サイトがあったら、嬉しいか

・お肉を運ぶとしたら、冷蔵か、冷凍か

お手隙の間にお返事いただけると幸いです

すごく丁寧な質問で賢い学生さんだなーと思った。

大抵は匿名で「牛飼ってるものですが、〇〇とかどう思います?」みたいなDMだからね笑。まず名乗ろうぜ。俺Googleじゃないから。みたいなのばっかり。

でも今回はちゃんと答えたくて電話で回答させていただきました。

仲介業者は搾取しているのか?

ここでよくある誤解について述べておきたい。

それは「中間業者と仲介手数料」についてだ。

巷では「牧場と直接取引してるので安くで提供できます!」とか「中間マージンを省くことで云々」とか、生産者と消費者の間に入る業者を抜くことが何か良いことのような雰囲気がある。

確かに米や野菜だと直接販売で消費者に安く提供できる事もあるかもしれない。でも肉は別だ。施設、技術、衛生面。部位ごとの商品化に営業力。単価も量も半端ない。1頭で枝肉500kgだもの。そんな商品を扱えるのは肉に特化したプロしかいない。牛のプロでは無理なのだ。

そもそも農家から直接肉を買うことは出来ない。「肉屋をやっている農家」からなら買えるけどね。

なぜ世の中の畜産農家が消費者への直接販売ではなく規模拡大を目指すかと言えば、(農業への手厚い補助金もあるけど)規模拡大しても売れるシステムがあるからなんだよ。売れるかどうか分からない他業種に力を割くくらいなら現状のシステムを使いながら大きくしていく方が正解だ。そんな感じなのです。

そもそも畜産農家は精肉卸会社に搾取されてるわけでは無い。自分たちが精魂かけて育て作り上げたお肉を取り扱ってくれるプロであり、お得意様なんだよね。

牛飼いと精肉業は全く別のジャンルだ。だからこそ卸売りという仕事がある。その卸と農家をつなぐ枝肉市場というシステムがあるから農家は安心して牛が飼える。子牛市場も同じこと。出せば絶対に売れるってマジで凄いことなんだよ。

そんな僕は牛飼いながら精肉販売もしている。正直ここだけの話、利益率はめっちゃ良い。でもそこまで行くまでには10年以上かかってる。ちょうどこの時代にSNSというものができ、僕の場合はfacebook、Twitter、Instagram、YouTube、ブログ、tiktokまで使いながら毎日投稿、フォロワーは合わせて5万人を超える。そんな積み重ねがあって直接小売が出来ている。

これはあくまで僕のケースだけど、どんな人であっても保健所の許可が通る精肉加工所の設置や設備導入は必要だし、精肉担当の職人の雇用、そして何より「利益を出して完売し続ける」という販売力が不可欠になる。それって仲介手数料を浮かす云々の話じゃない。投資をして全く別の事業を立ち上げるって事なのだ。

と偉そうに言ってる僕も完全には出来ていないんだけどね。。例えば我が家の繁殖牛60頭から生産される子牛の全てを市場に出さず、3年間肥育して枝肉市場にも出さずに、全頭自分でカットして小売りで回していくなんて、現状リスクが大きすぎてとてもとてもできない。市場があるからこそ安定的な経営が出来、その余力の中から市場に依存しない形を少しずつ構築しているって感じなのだ。

ん、、余力は、ないか。。。笑

【純粋で人のいい農家さんが業者にマージン取られている】。それは誤解だと思うんだよ。【畜産をしている経営者が戦略的に一つの事業に特化している】。そんな感じだと思う。

その中で「どうしても小売までやりたい!!」って人が「また違う形のリスク」をとって直接販売の道を選んでるって話だけなんだよね。

結局はやりたい道をそれぞれが選んでるってこと。その上で人と人が関わることでできることは増えるってこと。

そう思うと「仲介」業者なんてないのだ。
同志みたいなものなのかもしれない。

たとえ農協一つにしても僕はそう思ってるよ。

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬(カズマ)

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。
好きなものはカメラ、カレー、コーヒー、純米酒。

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