最終更新日2019.1.8 16:15
牛の毛玉は縁起物?
まっくろくろすけってご存知ですか?
別名ススワタリ。
妖怪みたいにおそろしげなもんじゃなく、ニコニコしとれば悪さはしねぇし、いつのまにかいねぐなっちまうアレです。
実は僕、去年、捕獲しました。
しかも、亜種(ホワイトバージョン)まで。。。
まさか大人になってから視られるとは思わなかったな。。。
ススワタリの正体
牛舎に生息するススワタリ。
実はこれ、牛の毛玉なんです。
牛の餌に繊維が少ない時、餌箱の中にフっと現れることがある。
https://twitter.com/tanakakazuma/status/725873215252254720
猫でもありますよね。
体を舐めて体内に入った毛。
牛の場合は反芻と一緒に口から出てきます。
ちなみに冒頭の白い毛玉はダメなやつ。
乾草を梱包しているプラスチックバンドを牛が間違えて食べたことが原因です。
毛やプラスチックバンドなど、胃の中で分解できないものがこうやって綺麗に丸くなって残ります。
でも何故か草玉もあるんだよね。。。(消化する前に出しちゃったのかな?)
ちょっ!!餌箱掃除してたら螺旋丸出ちゃったよーーー!!凄いなー、牛って凄いなー。 #毛玉とも言う #毛じゃなくて稲藁 pic.twitter.com/Jdellg1Wkr
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) December 20, 2017
本来牛の毛玉は消化不良の原因で、決して良いものではありません。
毛球症といって胃の出口の幽門が閉塞してしまい、最悪の場合は死亡してしまう。
中にはソフトボールくらいまで大きくなるものもあるそうです。
この牛の体内から出てくる「毛玉」。
調べていくと意外なことがわかりました。
この但馬には昔から毛玉を縁起物として扱っている地区があったんです。
縁起物の毛玉
但馬牛の原産地、香美町小代区にある但馬牛ミニ博物館。
ここの展示品の中に真っ黒でツルツルの「玉」がありました。
ん?一体これはなんなんだ?
毛玉と言いながらも全く毛がないじゃないか。。。
気になった僕は職員の方に尋ねました。
僕「あの〜、この毛玉って、毛が無いように見えるんですが。。。」
職員の方「ああこれね。木で作ったレプリカです。」
。。。。。。。。チ、チキショーー!!!
信じちゃったじゃないか!!
しかし、どうやら小代区東垣の大日堂にこの本物が保管されているらしい。
『但馬牛の安産祈願「大日祭り」に行ってきました!<上>』このブログによると1年に1度、1月28日の大日祭りの時だけ本尊と一緒に祀られている毛玉を見ることができるという。
マ、マジかよ。。。
大日さんとは大日如来の事。
但馬や中国地方では牛の神様として信仰されています。
縁起物と言われているのも本当なのかもしれない。
解剖で出てきた牛の玉
そんな時に知り合いの獣医さんがこんなものを送ってきてくれました。
20年前、大学の解剖実習の時に牛の体内から出てきたものらしい。
ん?
これ。。。
アレのアレやん!!
あの毛のない毛玉やん!!!!
僕が但馬牛ミニ博物館で見たものと大きさも形もそっくりだ。
軽くて硬くて今まで見てきた毛玉とは全く違う。
でもよく見るとしっかりと毛が付いている。
こうなると是が非でも1月28日の大日祭に行ってみるしかない。
そして2018年1月28日。
兵庫県美方郡香美町小代区東垣にある大日堂に僕はいた。
大日堂の毛玉
朝から道路も真っ白。
大日堂はさらに標高の高い場所にある。
牛飼いを早々に終えて子供達とドライブ。同じ香美町だけど小代は雪深いね。これから牛の神様を詣りに行ってきます!! #大日さん pic.twitter.com/ysfXCApher
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) January 28, 2018
300年の歴史のある大日祭。
地元の畜産農家が集まり、堂の中の囲炉裏にあたって牛談義をしています。
もちろん全員知り合いです。
小代区東垣の大日如来祭に行ってきました。牛の安産祈願をする大日堂は300年の歴史があり、牛飼いの間では大日さんと親しまれてきました。本来は毎月28日が大日さんですが、牛のお産の多かった1月に大日如来祭として本尊が開帳されます。多くの地元の牛飼いが集まり、ここで牛のお札を買って帰ります。 pic.twitter.com/GUC2GajNh0
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) January 28, 2018
堂の前には鐘があり、昔は子牛が無事生まれるとこの鐘を鳴らしてお参りしていたと聞きました。
大日堂の前には鐘があります。昔は子牛が無事産まれると、皆がこの鐘を鳴らしていたと聞きました。「ああ、〇〇ん家で子牛が生まれたのかなぁ」なんて言っていたらしい。それくらい牛と農家の生活は密着していたし、お産は大きな出来事だった。牛の安産祈願の大日さん。そのお堂がある東垣集落の話。 pic.twitter.com/Z1UrpuhoM3
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) January 28, 2018
僕も牛のお札と木札を買ってきた。
今年も事故ゼロでいけますように、やれることをやってあとは神様に丸投げしようと思う。
人の手が届かない部分もあるもんね。
大日さんで買ったお札、木札、熊笹。お札は神社やお寺でデザインが違うのが面白い。それぞれ小代区平野の牛玉山(ごおうざん)光明寺で祈祷されたものを、東垣の大日堂で配布しています。この熊笹は牛に食べさせて健康を占うんだって。本当は1頭に1枚だけど50枚は流石に多いので5枚にしました。 #牛札 pic.twitter.com/z5ny7ZS0WS
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) January 28, 2018
って、、、もったいぶってごめんなさい(笑)
しっかりと見てきました。
祀られている3つの毛玉を。
3つとも僕の持っていた毛玉と大きさも重さも材質も同じ。
そのうちの一つにはしっかりとした毛が生えていました。
念のため東垣区の方に確認したところ、「これ毛玉だわ。同じものだ。」と即答していただきました。
つ、つながったーーーーーーーーーーーーー!!!!
東垣の大日堂では、年に一度の御開帳の時にだけ見られる物があります。それが牛の毛玉。牛の体内から出る硬い玉で、これが出た家には幸せが訪れるという謂れがある。直径2〜3cmで軽く硬い玉。たまに牛が吐く毛玉とは全く異なるんだよね。この毛玉が見たくて1年間も待った。コレは一体何なんだろう? pic.twitter.com/tH980YqQqS
— 田中一馬 但馬牛農家の精肉店・田中畜産 (@tanakakazuma) January 28, 2018
でも結局、これが何なのかはわからなかった。
今回わかったことは牛の毛玉には2種類あるということ。
一つは毛が丸まってできたもの。
そしてもう一つが木のように硬く軽い毛玉
これが本当に毛玉なのか、何かに毛が付いただけのものなのか、もしかしたら奇形腫なのかもしれない。
昔からこの地で縁起物として祀られている毛玉。
引き続きこの毛玉の調査を続けたいと思う。
でもちょっとこのままでもいいかなって。
そんな気持ちも少しあるんだけどね。。。