最終更新日2019.1.8 11:37
大好きな牛さんを大切にお肉にすることは矛盾しない~屠畜を終えて思う事~
「てるひさ」と「まつふくよし」
2頭の牛さんが、無事にお肉になりました。
こんばんは。
兵庫県の但馬牛繁殖農家、精肉販売をしております、田中畜産あつみです。
季節が巡り、今年もお肉販売の時期がやってきました。
我が家で取り組んでいる、放牧敬産牛肉。
役目を終えたお母さん牛を、出荷する前の8か月間、山の放牧地で放牧させ、そのままお肉にしています。
こんな生産方法のため、山に雪が降る前の時期にしか精肉販売をしないという、なんとも変わった我が家です。
今日は、そのお肉にする子達を、屠場へ連れて行く日でした。
早朝から主人と二人で山へ行き、牛さんを家畜車に積んで出発します。
気温差もあったためか、放牧場の真下には雲海が広がっていました。
屠場に着くと、すでに多くの牛さんが!
年末年始やお盆の時期は、牛肉の消費量が上がるので、今時期お肉屋さんや屠場は大忙しです。
繁殖農家の我が家。普段は屠場へ行くことはほとんどありません。
他の人の邪魔にならないように、牛さんを見たり、作業を見たりします。
我が家の子達も、無事にお肉になれました。
関係者の皆様、本当にありがとうございます!
お客様にこの子達を届けられるのが、ただただ嬉しいです・・・・
今でこそ、牛さんがお肉になることに対して肯定的に捉えていますが、以前はそう思えなかったです。
「え、食べられちゃうなんてかわいそうじゃん。。。」
「結局食べるために育てるんでしょ?」
特に繁殖農家・肥育農家は子牛だったり肥育牛だったりを取引して、それをお金に変えて、最後はお肉になるというのがダイレクトに伝わってきますよね。
それが嫌で、嫁ぐ前なんかは「酪農家は牛さん売らなくても良いだろうから、酪農家の方が良いな」て本気で思っていました。
酪農家だって、子牛も売りますし、お母さん牛はやっぱりお肉になります。全く分かっていなかったんですね^^;
嫁いでしばらくは、子牛を市で販売するのもなんだか嫌でした。
お別れが悲しくて・・・
今思うと、
この子たちの命を売って生活している・生活出来ている
という事が受け入れられなかったんだろうなって、そう思うんです。
愛着があるのももちろんあります。
それなのに、かわいくて、大切な存在なのに、売ってしまうの?
後々はお肉になっちゃうんでしょう?
牛さんが好きで畜産の世界にやって来たのに、最終的にはお肉にしてしまう事が受け入れられないような、矛盾があるような・・・
そんなふうに感じていました。
その気持ちが変わったのは、自分たちでお肉販売をするようになってからです。
牛さんたちは、お肉になって終わりではなく、その先のお客様。
誰かが買って食べてくれて、その人の力に変わっていく。喜んでくれる。
命は巡っていくんだな。
そう実感しました。
形は変わってしまうけれど、この子たちの命は意味がある。
「大切に飼う」ことと「食べること」は矛盾しないんだ。
大好きな牛さんを大切に飼って、お客様に届けて、生活をする。
それが牛飼いなんだな。
自分の中に、その思いがストンと落ちてきました。
この子たちは、この子たちの生を全うしました。
これから先。
私たちの精一杯で向き合わなかったら、そんなのダメだよね。
私たちも頑張るよ!!!