田中一馬ブログ

畜産の新規就農の相談を受けてきて、今僕が伝えたいと思ったこと(前編)

こんにちは

但馬牛繁殖農家のお肉屋さん田中畜産の田中一馬です

24歳の時に5頭の妊娠牛を導入し研修先の牛舎を間借りしてスタートさせた畜産経営

非農家出身の僕が牛飼いを始めて14年が経ちました

就農当初に借りていた牛舎

畜産の新規就農は資金面や土地の確保など様々なハードルがあります

畜産業界でゼロから起業するケースは未だ珍しく今でも僕の所に相談に来られる方が多いのが現状

昨日も少しだけですが就農の相談をいただきました

 

でもね結論から言いますね

 

どうすれば畜産の新規参入が可能かなんて全くわかりません!!!!ごめんなさい!!

 

ただ10年近く色々な方から相談を受ける中で僕が共通して感じたことがありました

今後牛飼いをしたいと思っている方のお役に立てれば幸いです

今回は主に学校を卒業して畜産経営を目指したいという若い方に向けて書いています。)

新規自営就農者と新規参入者

新規就農者って言葉があります

その名の通り新たに農業に就く人のことです

最近農業に就く方が増加しているというニュースを耳にするようになりました

そういうニュースを見ると

農業って楽しそう!!動物が大好きだしいつか牧場を運営してみたいなー。」

って思っちゃう方も多いのではないでしょうか

はい僕自身もそうでした

小さい頃から祖父の家の近所にいた牛を見に行くのが楽しみだった僕

でもね増加していると言っても実は新規就農者にも色々あるんです

ここではまず畜産をゼロから始めるというケースを数字で見てみたいと思います

農林水産省が定義する新規就農者は3種類に分けられています

①新規自営就農者

②新規雇用就農者

③新規参入者

①新規自営就農者

農家世帯員で調査期日前1年間の生活の主な状態が「学生から自営農業への従事が主になった者及び他に雇われて勤務が主から自営農業への従事が主になった者

いわゆる農家の跡取りがこれにあたります

②新規雇用就農者

調査期日前1年間に新たに法人等に常雇い年間7か月以上として雇用されることにより農業に従事することとなった者外国人研修生及び外国人技能実習生並びに雇用される直前の就業状態が農業従事者であった場合を除く。)

農業法人の従業員です

③新規参入者

調査期日前1年間に土地や資金を独自に調達相続・贈与等により親の農地を譲り受けた場合を除く。)新たに農業経営を開始

した経営の責任者及び共同経営者

こちらがゼロから農業を始めるパターンです

 

同じ新規就農者と言っても跡取り雇用起業と状況は全く異なります

では実際どのくらいの方が新規就農者として農業をされていると思いますか?

平成27年新規就農者調査では新規就農者は65,030人

6万人って聞くと多い気がしますよね

2016/7/24付の日本経済新聞を見るとこう書いています

農業に従事する人が減り続けている農林水産省によると2016年2月時点で約192万人となり現行基準になった1995年以降で初めて200万人を割った前年より8%95年より5割ほど少ない担い手のほぼ半分を占める70歳超の高齢者の離農が進み若年層との世代交代もみられない

つまり入ってくる人よりも辞める人の方が多いということです

実際に僕らの地域でも農家戸数は減少の一方で新規就農者の確保は非常に大きな問題となっています

求められているはずなのに減り続けている農家

話がずれました。。。

この記事で注意したいポイントは≪若年層との世代交代もみられない≫という一文です

平成27年度の新規就農者を年代別でみてみると49歳以下は23,030人

つまり新しく農業を始める約2/3の方が50歳以上

セミリタイヤもしくは定年退職後の方々によってかろうじて日本の農業人口は維持できていることがわかります

では更に高校や大学を出てから就農された方ってどのくらいいるのでしょうか?

27年度の統計では29歳以下の新規就農者は8,790人

そのうち

①新規自営就農者・・・3,920人

②新規雇用就農者・・・4,260人

③新規参入者・・・・・620人少なーーーーー!!!

また新規就農者就業状態調査によると畜産を経営している新規就農者の割合は全体の4.8%

畜産の新規就農は初期投資が非常に高いため参入へのハードルが非常に高いのが特徴。)

29歳以下の新規参入者620人の4.8%を計算すると。。。。。。。。30人っす

新規就農者就業状態調査は最新のものが平成19年のデータのためこの数字はあくまで参考イメージだと思ってくださいね。)

つまり

卒業後の就職先として畜産業を見た時ゼロから始める新規参入は非常に狭き門であるという事です

数字を見るとなんとなくイメージできますよね

それでも夢を見る学生

それでも「新規参入で牛飼いをはじめたい!!という人は多い

僕もそうでした

小さい頃から動物が好き

将来牧場経営が出来たら最高だよなと北海道の酪農学園大学に入学した僕

数ある部活動の中で僕が選んだサークルは肉牛研究会という華やかなキャンパスライフとは全く無縁のサークルでした

土日は作業で休みなし3週間に1週間は牛舎に寝泊まりの当番人工授精から子牛の育成牛舎建設や肥育した牛の精肉販売まで

畜産業界のすべてを学生だけで運営するサークルでした

肉牛研究会での一コマ20年前っす。。。面白かったなー

このサークルにはたくさんの意識の高い学生が集まっていました

獣医学部や農家の跡取りは別として新規参入で牛飼いをしたいという学生が多かった

しかし実際には新規参入で畜産農家として生計を立てているのは僕の知る中で4~5人しかいません

僕より明らかに有能でやる気のある先輩方が牛飼いをあきらめる姿を僕は見てきました

新規就農を目指すに当たり推奨されているステップがあります

僕も含めたみんなが通るこのステップ畜産に関して言えばこの就農までのステップは全く当てにはなりません

一般的に言われている新規就農までのステップ

新規就農者の確保は国の重要政策でもあり非常に優遇された融資や補助制度が整備されています

しかしこれを使うほとんどのケースが新規自営就農者農業後継者です

新規参入者はそのステージに立つこと自体が非常に難しい

一般的に言われている就農へのステップを見てみましょう

こちらの画像は青森県の農林水産部のHPからお借りしました。)

 

 

一見なるほどと思ってしまいますが畜産の新規参入はこのステップではうまくいきません

学生が畜産業を志すケースの場合就農準備の項目の一番最初である農業体験・基礎知識の習得が大学や農業大学校にあたります

この時点では技術お金知識人脈土地経験など何もありません

ここから⑩までたどり着いて初めて国の制度資金を利用することができます

よくこんないい補助制度があるんですよね!!って聞かれる方がいます

補助金活用するためにはこうした方がいいですよねとか

⑩からスタートできる新規自営就農者ならそういう視点で動けばいいです

しかし新規参入者は④です!!

とにかくひたすら④です!!!!!

そのため多くの方が大学を卒業すると夢を持って農家や農業法人に就職や研修に約2年入ります

研修を通して技術お金知識人脈土地経験を得ようとする

畜産水稲果樹大豆露地野菜など業種に限らずほぼ全ての新規就農希望者がこのステップを踏みます

 

でもね畜産の場合初期投資額が他の業種に比べてけた違いに大きい

たった2年で得れることなんて限られています

良い条件の農業法人で初任給15万円もらえたとします

生活費を差し引いて5万円の貯金が出来たとして12か月で60万円

2年務めても120万円です

畜産の中でも比較的初期投資の低い和牛繁殖経営であっても50頭揃えようと思えば5,000万円は必要

120万円なんて就農した年の1年の生活費で消えてします

初期投資額の足しにも運転資金にすらもならない

技術も知識もある程度は習得できても実際に自分で経営しないことにはわからない部分は絶対あり限界がある

つまり2年間研修してもどうやったら牛飼いになれるかわからないにしかならないのです

そこで諦めて次の道を探す方がほとんど

気持ちのある方はそれでもあきらめきれなくてもう2年さらにもう2年研修を重ね可能性を模索する

だけどどうしてもお金が足りない

気が付けば大学卒業して6年再就職先も限られてくる

各々が納得して選んだ道とは言え僕よりも能力の高い諸先輩方が苦難の道を歩かれるのを見て牛飼いなんて僕には絶対できないって思いました

普通で考えると無理って思っちゃいますよね

だけど無理って決めたらやっぱ無理なんですよね

ステップの先には就農がある

確かにこれは一つの正解でもあります

ただステップを超えていくにはそこにいるだけではダメ

自分で模索するのはもちろんのこと人の助けや運も必要です

後編は僕がこのステップを超えるにあたって大切だと思ったポイントを書いていこうと思います

つづく

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬(カズマ)

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。
好きなものはカメラ、カレー、コーヒー、純米酒。

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