田中一馬ブログ

VRが牛に快適性をもたらすために一番大切なこと

VR(仮想現実)で牧草地を牛に体験させて生産性をアップさせる。
そんなニュースがバズってますね。

原文がロシア語なので読めてないんですが、翻訳読む限りではフェイクニュースなのかなと僕は思ってる。

記事はこんな感じ。

牛もVRを装着する時代に? 「夏の牧草地」の疑似体験で、牛乳生産が増加する実験始まる

ゴーグルを着けるだけで、まるで別の世界が目の前に広がるVR。ゴーグル一つでバーチャルの世界に飛び、幸せに働くことができれば、仕事の生産性も向上するのでしょうか…。

そんなディストピアのような研究が、ロシア・モスクワの牧場で始まっています。

モスクワ州農業・食糧省は11月25日、牛に装着するためのVRヘッドセットを開発したと発表。牛乳の品質や量を向上するために、酪農にVRを導入し、牛に仮想現実(VR)を体験させるという実験を行ったそうです。

牛をマッサージするロボットを導入したり、牧羊ロボットを使って牛を運動させたり、クラシック音楽を聴かせたり…。牛をリラックスさせるための取り組みは世界各地で行われているそうですが、今回のVRヘッドセットは、牛の視界に合わせて特別に開発されたもので、装着すると穏やかな夏の牧草地を体験できるとのこと。

最初の実験の結果、VR効果で牛の不安が減少し、感情が全体的にポジティブなものになりました。モスクワ州農業・食糧省は今後、牛乳の生産量が増加するかどうかを実験する方針です。効果が確認できれば、「プロジェクトの規模を拡大し、国内の酪農生産の近代化を促進する」としています。 

(HUFFPOSTより)

マジで突っ込みどころが満載だ。

①前面だけのVRヘッドセットで牛の視野を網羅できているのか、②緑色をはっきりと認識できない中でどういう色覚調整をしたのか、③感情がポジティブの基準はなんなのか、④、⑤、、キリないからやめとこう。。。

今回は【これらの全ての矛盾点を全て許容した上でこのVRが機能した時、本当に牛に快適性はもたらされるのか?】ということについて書いていきたい。

仮想現実の仮想は妄想

牛は視覚情報に非常に敏感な動物です。

被食者である草食動物は人間が認識している以上の情報を視覚から感知しています。
例えば牛舎から外に牛を出そうとしてもスムーズに歩く牛なんてほとんどいない。
小さな段差、水たまり、路面の変化、影などの明暗差。そういった人間が「なんだよ。そんなもの。。」というようなものであっても、牛にとっては恐怖や警戒の対象になる。

そんな普段牛舎にいる牛たちをいきなり放牧場に出すと、牛にとってのストレスが大きくなる事は言うまでもない。実際に放牧場に出してパニックになった牛を何頭も見てきました。大切なのは慣れるまでの過程なのです。

『穏やかな夏の牧草地が牛にとっての幸せである』

そんなのは単に人の主観であり、人の願望だ。

普段と変わらないことが牛にとっての安心につながる。その「普段」をどう良くしていくかが牛飼いの仕事でもあると僕は思っている。

牛にとって快適な環境が生産性を向上させる。そのことに異論がある畜産農家はいないだろう。
だからこそ日々喋れない牛を見て想像し、設備に投資もしながら、分からない牛を飼い続けることができるのだ。

おそらく今回のニュースはフェイクだと思う。
この絵面に反応して記事にする各種メディアもどうかとは思う。
ただ、今後技術の進歩に従ってVRが家畜に与える影響はゼロとは言えない。

はっきり言おう。

VR(仮想現実)がダメなのではない。
仮想している現実が牛が求めるものと大きく乖離してるって話なんだよ。
牛を知らないっていうか、牛を見てないって感じ。

VRが牛に快適性をもたらすために一番大切なことは、どこまで牛について考えられるか。
人も牛も理想の押し付けは迷惑千万。

ちょと考えればわかること。

 

YouTubeでも解説したのでこちらもどうぞ。

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬(カズマ)

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。
好きなものはカメラ、カレー、コーヒー、純米酒。

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