田中一馬ブログ

人工知能が蹄病発見?AIの台頭で牛飼いの二極化が加速する時代に。

こんにちは。

但馬牛繁殖農家のお肉屋さん、時々削蹄師の田中一馬です。

ツイッターを見ていたら面白い記事がありました。

AI(人工知能)を利用して蹄病を見つけるというものです。

一部抜粋してみますね。

 
映像解析によって、家畜の病気を早期発見する研究も行われている。大阪大学産業科学研究所の八木康史教授らの研究グループは、酪農学園大学の中田健教授と共同で、人物歩行映像解析技術を乳牛に応用し、乳牛の歩行を撮影した映像から蹄の疾病を早期発見する手法を開発。99%以上の高精度で発見できるというのだから驚きだ。

和牛でこそ少ないですが、酪農の世界では家畜生命を左右するほどの大きな要因でもある蹄病。

その多くは削蹄をすることで発見されます。

しかし実は、牛の歩き方(跛行)で蹄病の兆候は知ることが出来ます。

軽微な跛行の段階で対応すれば、牛の負担は大幅に減り生産性も落ちることはありません。

ただ、この軽微な跛行に気がつくのが難しい。。。

痛い足を捜してみよう

ここに5つの映像があります。

愛知県の知多大動物病院の増岡獣医師が提供してくれたもの。

まずは各映像を見てみてください。

どの足に蹄病があるかってわかりますか?

どうでしょう?

これらは比較的わかりやすい牛ばかり。

正解は

①右後肢

②左前肢

③左後肢

④右前肢

⑤左後肢 です。

僕は⑤を右後肢と間違えました。

削蹄師である僕が注意して見てもこんなもの。

日常の作業の中で跛行を見つけるのは、よほど顕著なものでなければ意識を高く持った農場でも難しい。

AIは人の目を超えるのか?

『AIが歩様から蹄病を発見する時代。』

99%以上というその精度はハンパなく、にわかには信じられない気持ちが大きい。。。

しかし、他の分野では大きな成果を挙げつつあるAI。

人工知能のワトソンが特殊な白血病患者の病名を10分で見抜いたニュースは非常に有名です。

IBMのWatson、わずか10分で難症例患者の正しい病名を見抜く。医師に治療法を指南

将棋界では人間がAIに勝つのはもう不可能といわれている。

畜産分野でのAIの進化も計り知れない。

そんなことを感じてこんなツイートをしました。

①誰が見ても跛行が分かる

②農家がよく観察すればわかる

③人の目では分からない蹄病予備軍

99%の発見率は凄いけど①じゃ意味が無い。

でもきっと③まで出来るようになるだろな。

現状ではまだ人の目に取って代わるものではないと思う。

しかし一方で、これからどんどん匠の技術はAIに取って代わられるとも思っている。

機械では絶対にまねできないと思われていた「匠の目」

鶏、豚と大規模企業化が進む中で、飼育期間が長く遺伝子的にも飼養管理的にも不確要素の大きい牛は企業化が難しいといわれてきた。

不確的要素が大きいからこそ人の目がモノを言ったし、名人が多くいる業界でもある。

しかし、この目こそが最も機械に台頭されるモノなのかもしれない。

誰もが同じように同じような牛を生産できるようになったとき、生き残るのはメガファームだと思っている。

牛も豚や鶏と同じく多頭化・企業化の方向に進む。

そうなったときに僕らはどうあるべきか。

規模をひたすら拡大するか、もしくは個人を選んでもらうか。

この二極化が畜産の世界でも加速する気がしている。

匠の目を否定しているのではない。

僕ら中規模農家は既存の販売ルートが安全だと思うことは危険だってことだ。

現状では牛の絶対数が足りていないため、小規模繁殖農家が淘汰されることは考えにくい。

しかし牛の数は適正頭数に増加していくと僕は思っている。

今のルートでしっかりと利益を出しつつ

「あなたの育てた牛が欲しい」といってもらえる方向にシフトしていく。

それしかないんじゃないかな。

但馬牛を飼う田中一馬ではなく、田中一馬の牛が欲しい。

すべての農家がそうあるべきだとは思わない。

ただ、僕はそうありたいという話です。

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として様々な農家の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛を中心に長期肥育や経産肥育、放牧牛肉の生産などをスタート。
好きなものは牛肉、漫画、純米酒、ウイスキー。ここ1年はサウナにドハマり中。

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