田中一馬ブログ

但馬家畜市場 3月市

昨日は牛市でした。

前日からの大雪で道路状況が悪かったため、朝5時から牛たちを積み込んで出発です!

牛市の日の朝6時半~7時半にかけて、国道9号線の村岡→八鹿間では牛を積んだトラックをあちこちこちらに見かけることができます。

大きな家畜車から軽トラの荷台を改造したものまで様々な「うしぐるま」が走っています。

みんな大切な牛を積んで走っているので安全運転。

通勤時間帯と重なると、かなりの渋滞になるときもあります。

「水曜日に遅刻しそうな子どもを学校まで送りに行ったら、まぁ走らんこと!走らんこと!抜いたと思ったらまたうしぐるま。抜いたと思ったらまたうしぐるまで、ちっとも進まん!!」

なんて言われる方もいるくらい。

ご迷惑をかけているのかなという気持ちも少しありますが、これだけ色々なうしぐるまがあちこち走っているのを見ると僕はテンションが上がります。

トラックによっては牛の全身が見えるものもあり、見かけたらラッキー!!

僕はこの地に牛がいるというひとつの風景だと、大切に考えています。

6時半には市場へ到着。

今回も一番乗りでした。

まだ牛が来ていない市場はとても静かです。

牛が集まり活気のある市場とは全く違い、この早めの薄暗い時間帯の搬入が僕はとても好きなのです。

子牛の手入れもゆっくりできるし、牛のペースで積み降ろしができるので人、牛ともにストレスが少ないのがいいんです。

7時半までに搬入された牛たちを再度掃除し、毛並みを整えて9時半からのセリを待ちます。

この2時間の間に購買者の方は牛の下見をします。

もちろん僕も牛を見て回ります。

ここで種雄牛ごとの牛の発育や体型を見たり、純粋にいい牛を探したり、農家ごとの牛の違いをみたりします。

(あちこちにところ狭しとうしぐるまが。)

今回、我が家からはメス3頭、去勢1頭の出場でした。

おふくひさ(芳悠土井×おふく(丸福土井)×菊俊土井)

てるひさ(芳悠土井×てるふく(照俊土井)×谷福土井)

ゆきあきなみ(丸明波×ゆきひめ(照波土井)×照長土井)

団子(菊毬土井×あんこ(福芳土井)×第2安鶴土井)

市場の総平均は705,149円

内訳は

雌 157頭 最高1040040円 最低441720円 平均655484円(前年同期比135518円高)

去勢 177頭 最高893160円 最低530280円 平均749203円(前年同期比194557円高)

でした。

とにかく高いですね。

昨年末から異常な程の子牛価格の高騰が続いています。

何十年も但馬牛を飼い、牛が200万、300万する時代を知っている方々でもこんな高い相場は経験したことがないと言っていました。

この子牛価格の高騰は全国的なものですが、特に昨年からの但馬牛の価格は群を抜いて高い傾向にあります。

全国の2014年の子牛市場の統計を見ると、兵庫県の但馬家畜市場が645,495円と全国トップ、2番目が淡路家畜市場の643,341円、3番目に鹿児島の薩摩中央、岐阜の飛騨家畜流通センター、栃木の矢板市場と続きます。

兵庫県の子牛価格は2015年現在も日本一です。

この異常相場は牛の頭数が減ったことによる素牛の供給不足や神戸ビーフの輸出、それに伴う枝肉相場の高騰などが大きな要因として考えられています。

ただ、この価格は国内の小売り価格の上昇に伴うものではないので、いつまでも続く価格ではありません。。。

そうは言っても1頭あたり70万円と聞くと、牛飼いは派手な仕事に見えるかもしれませんね。

しかし、数年前までは子牛の市場平均が40万円前半などという時期が続いていました。

原価割れする子牛が多く、繁殖経営を継続する事が非常に難しい時期でした。

市場なので良い時もあれば悪い時もあります。

農業はやりがいのある仕事ですが、かなり不安定な仕事でもあるのです。

いずれにせよ相場はコントロールできないので、一喜一憂しても仕方ありません。

ただ、儲けられる時期にしっかり儲けることは大切です。

去勢の団子は地元の肥育センターへ、ゆきあきなみは県内の肥育農家さん、おふくひさとてるひさは三重県松阪市に行きました。

おふくひさとてるひさは同じ農家さんに買っていただきました。

この農家さんの目にとまることは僕にとってのメス牛を販売する際の目標だったので、2頭も選んで頂けたことはとても自信につながりました。

(おふくひさ)

(てるひさ)

最近、周りの方から「牛が良くなった。」「良い牛だ。」と言われることが増えてきました。

この「良い牛」ってブログだと曖昧で伝わらないですね(笑)

この場合の良い牛とは牛の姿かたちが良いということを指します。

姿かたちは生まれ持ったものが大きいのですが、生まれ持ったものをどこまで出せるかが牛飼いとしての技術。

だから「良い牛だ」は最高の褒め言葉なのです。

実際にうちの牛が良いかどうかはまだ自信がありません。

しかし、いろいろ手を出してきて気づいたことは健康でないと牛は良くならないということです。

牛が健康だとそれなりにその牛なりに勝手に良くなります。

そんなことが10年以上やってきてようやく分かってきた気がします。

(ただ、この健康に飼うというのが難しく、自分で納得のいく牛というのはなかなかできません。。。。)

健康な牛。

これも曖昧で、語る人の数だけ自分なりの健康な牛があります。

だけど、牛の大きい小さい価格が高い安い関係なしに、共通する健康な牛というものはあると思うのです。

それについてはちょっと思うことを近いうちにかけたらなあと思っています。

放牧しているから健康に決まっている。

肥育はメタボで病気。

そんな風に「情報や条件」で牛を語るのではなく。

単純に今、その牛を見てその牛のことが分かる。

そうならなくてはいけないし、それが事実なのだと思います。

僕の強みは「新しいこと(変わったこと)」を始めるということではありません。

このバリバリ牛飼いの世界で、和牛繁殖農家として削蹄師として仕事をさせてもらっていることが僕の強みなのです。

これがあるから僕は放牧牛肉にも取り組めます。

放牧牛肉も今はまだ但馬牛の能力と放牧という環境に丸投げしているだけのものです。

そんなことは素人でもできます。

自分の牛飼いとしてのスキルをあげることが、喜んでいただける牛肉生産につながると信じています。

だからこそベースとなる子牛生産で少しずつよくなってくる牛たちを見ていると、とても嬉しいのです。

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として様々な農家の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛を中心に長期肥育や経産肥育、放牧牛肉の生産などをスタート。
好きなものは牛肉、漫画、純米酒、ウイスキー。ここ1年はサウナにドハマり中。

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