最終更新日2019.1.8 11:38
「牛飼いが私の仕事」「牛飼いが好き」と思えるようになるまで③(完結編)
こんばんは!
兵庫県の但馬牛繁殖農家の田中畜産あつみです。
今日は、
「牛飼いが私の仕事」「牛飼いが好き」と思えるようになるまでシリーズを完結させたいと思います。
今まで反発していた主人の言葉を素直に聞けた
牛舎の牛さん達の体調も良くなり、主人の鬱も寛解(鬱だと「完治」とは言わないそうです)し、私も出産・子育てに落ち着きが出て、お互いに牛舎仕事が出来るようになった頃。
少しずつ意欲も湧いてきて、子牛市や品評会なども楽しく参加できるようになりました。
そこで見る牛さんたちがどれも良く見えて、牛舎に帰ってから主人に
「うちも良い牛さん作りたいね〜」
と、何気なく話していたんです。
すると主人が
「今の家だったら、圧倒的に牛舎にいる時間も少ないし、○○とか△△とか、出来てないとこ多すぎる。今のままだったら出来へんで。」
と言ったんですね。
せっかく意欲的になってんのに、水を差すようなことを主人はよく言います(笑)
感情型の私、理系脳の主人。真反対でなかなかバランスが取れている田中家夫婦です。
で、以前の私だったら
「削蹄とかで牛舎にいないこと多いくせに、偉そうに言ってさ!フン!!」
と、すごい逆ギレして反発していたんですよね。
でもこの時は、
「そうだよね。まずはこれらをしっかりやってこそだよね!」
とても素直に、主人の言葉を受け止められたのです。
「良い牛さんが作りたい!」という意欲が、ムクムクと湧いてきたのです。
逃げずに牛飼いに向き合った時期があったから
数年前の、子牛の事故が多発して、主人の鬱が重なった時期。
体調の悪い牛さんばかりで、牛舎に行くのがしんどくて、とても怖かったです。
それでも、そこで逃げずに牛飼いに向き合えたから、今、牛飼いが好きになったんだと思うんです。
もしかしたら、あの時、別の仕事に就くといった選択肢もあったかもしれません。
もう嫌だ。牛飼いはしないって選択肢。
それも、不正解ではないと思います。
でも、逃げ出さなくて良かった。
牛飼いが好きになれて良かった。
牛さんが好きって思える私になれて本当に良かった。
2〜3年前の主人との会話で初めて、
「私の仕事は牛飼いだ」
と実感し、ストンと腑に落ちたんです。
全部、繋がっている
ヘリオット先生の本に出会い、牛さんが好きになった学生時代。
大学やアルバイト先の牧場で実習するのも、ただただ楽しかった。責任感も特に背負う必要がなかったからかもしれません。
とりあえず牛だったらなんでも好き!なその頃よりも、今の方が確実に牛さん・牛飼いが好きだと言えます。
でも、その当時の「やんわり、甘々牛が好き」な気持ちを否定しているわけではありません。
本で牛さんを好きになって、大学で勉強して牛さんがとにかく好きになって楽しくて、結婚してから牛飼いが嫌いになって、逃げて、向き合って、また逃げて向き合って。
その全てが今に繋がっている。
この全部があったから、今「牛飼いが私の仕事」と実感出来るんだと思います。
「牛さんは、売って終わりではなく、その先に誰か食べてくれる人がいて、その人の力になってくれる」
というのも感じられるようになり、前は罪悪感もあった
お肉にすること。命をいただくこと。
にも、意味を見出せるようになりました。
子牛市や品評会などで、先輩農家さんから教えていただける牛話も、すごく楽しみになっています。
できない自分に落ち込んだり、「今日は牛舎行きたくないなぁ」と思うことも度々あります。
でも今は、
「それでも牛飼い好きだよ」
と言えます。
それがとても嬉しく思うのでした。