田中一馬ブログ

削蹄鎌の研ぎ方⑥

こんばんは田中畜産の田中一馬です。

今日は削蹄鎌の研ぎ方⑥、両刃の研ぎ方〜刃の角度をどうするか〜です。

刃を研ぐ角度で鎌の性能は大きく変わります。

ここにA、B、Cの鎌があります。

Aの鎌は刃の角度が大きく、切る際に抵抗が大きい。

Cの鎌は刃の角度を寝かしてあるので、切る際の刃にかかる抵抗は少ない。

刃の角度を小さくすればするほど、抵抗が少なく蹄をスムーズに削切することができます。

その為、削蹄鎌を研ぐ際は刃を寝かす(角度を小さくする)のが一つのポイントになります。

AよりCの方が使い勝手はいい。

Aの鎌をCにするには斜線部分を落とす必要があります。

前回のブログで書いたハマグリ刃にならないようにまっすぐ落としてくださいね。

これを#1000の砥石でやるのはとても時間がかかって大変です。

#320の粗砥石や、グラインダーなどでざっくり落とすと、時間短縮ができます。

ただ、ざっくりとで止めておかないとグラインダーでは削り過ぎる恐れもあります。

また最後まで粗砥石で研ぐと、いくら仕上げ砥石を使おうが刃に細かい傷が入ってしまいます。

刃の角度を小さくすることは刃の強度が弱くなるということなので、細かい傷は刃こぼれの大きな原因となります。

できることなら練習も兼ねて#1000の砥石で最初から最後まで仕上げてみてください。

(#1000で仕上げると時間がかかります。

時間をかけて研ぐと砥石が変形してくるので、砥石が極端な船底型になる前にコンクリートの床で砥石をこするなどして修正してくださいね。)

落とすのがめんどくさい時はこんな方法も。。。

この鎌は片刃ですが、同じように角度を寝かせたいので発注段階で寝かせてもらい納品していただいています。

こちらの両刃の鎌は刃の厚み自体を薄くして打ってもらっています。

刃の厚みが最初から薄いので、寝かして研がずとも最初から角度の小さい鎌になっています。

では、削蹄鎌は角度を小さくして寝かせればいいのか?

実はそうではありません。

牛の蹄は環境によって硬さや形状が大きく違います。

乾いた床環境にいる牛の蹄は水分が少ないためカチカチになります。

カツオ節までとは言いませんが、カッチカチになった鏡餅くらいの硬さと厚みにはなります。

こんなの当然薄い包丁では切れないですよね。

でも、斧だったら叩き切れます。

一方、水分の多い床環境にいる牛の蹄はダイコンを切るより柔らかいので包丁のように刃が薄い方がきれいにサクサク切れます。

つまり、硬いヒヅメにはAのような鎌を、柔らかいヒヅメにはCのような鎌を、どちらでも対応できるBのような鎌も持ち、現場によって使い分けると効率的に削蹄ができます。

ただ、両刃の鎌は片刃に比べどうしても厚みが出ます。

だから、ある程度薄く研いだほうが使いやすい。

Aだと使いにくいけどCだと刃が欠けちゃうんだよな。。。

という場合は、一旦Cの鎌を作り、最後に少し刃先だけ角度をつけるという方法もあります。

「薄い鎌こそ使いやすい」というのであれば片刃に勝るものはないです。

しかし両刃も良いところがたくさんあります。

その一つが強靭さです。

両刃の特性を理解し、長所を活かす研ぎ方を刃の角度から考えてみると面白いですよ!!

次回は両刃の削蹄鎌を研ぐ4つのポイントの④『刃の逃がし先を作る』です。

削蹄鎌の研ぎ方シリーズは【こちら】からご覧いただけます。

(続く)

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として様々な農家の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛を中心に長期肥育や経産肥育、放牧牛肉の生産などをスタート。
好きなものは牛肉、漫画、純米酒、ウイスキー。ここ1年はサウナにドハマり中。

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