田中一馬ブログ

牛の鳴き声にも様々な種類がある。

牛はモーと鳴く。

だけど、このモーにも様々な種類がある。

生まれて間もない子牛はおなかが空くとべぇ〜って鳴く。

生まれが虚弱で上手く乳が飲めていないのか、親が蹴る牛で子牛に乳を飲まさないのか、何にせよ鳴くというのは必要があるから鳴くのだ。

安心して満たされているときには牛は鳴かない。

冬場に生まれ低体温による仮死状態となると、意識が朦朧として子牛はめぇぇぇぇぇぇぇぇぇと鳴く。

これは非常に危ない状態でほっておくと確実に死んでしまう。

そういう場合は2時間近くお風呂に入れて体を温めると、少しずつ脳に酸素が周り子牛は落ち着き鳴かなくなってくる。

雄雌でも鳴き声はちがうし、その牛が求めるものによっても声は変わる。

我が家は牛舎と家が隣接しているので、夜寝ていても牛が鳴くとすぐわかる。

目をつぶりながらだいたいどこの牛が鳴いているのか、親なのか子牛なのか。

何が原因で鳴いているのか。

発情しているのか、腹が減ったのか、もしかしたらチェーンが絡まって身動きできないなどトラブルの可能性もある。

なるべく布団から出たくないので、慎重に布団の中で牛の声を聞き分けて状況を推測する。

急に牛たちの大合唱が始まると、「逃げたぞ!」という牛達からのサイン。

慌てて布団から飛び出して牛舎に牛を捕まえに行く。

夜中にみんなを起こして大捕物の時もある。

さて、昨日離乳をした。

分かってはいるが親子の大合唱がとてもうるさい。

寝れないくらい。

親子合わせて12頭のウォー!ンー!ゴォ〜!モー、べー!んべー!などなど声が混じってとにかくうるさいのだ。

9年前までは違う場所で牛飼いしていたんだけど、その当時は牛舎の2階で寝ていた。

そのときは耳の真下で一晩中牛の大合唱だから寝られるわけがない。

ティッシュを耳に詰めてなんとか数日過ごした。

だからという訳ではないが、あまり牛が鳴くのは好きではない。

いかに鳴かないような環境を作れるかを気にしている。

それは牛が落ち着いてるってことにつながるから。

余談だが、昔の牛は発情すると鳴いて鳴いてうるさかった。

今の牛は発情で鳴くことなんてほとんどない。

鹿なんて発情期にはしょっちゅう鳴いているのにね。

牛の野性味がなくなったということかな。

たった10年くらいの改良で牛というのは変わる。

何かを伸ばそうと選抜すれば、当然失われていくものもあるよね。

牧場へ行ったり、テレビの中で「うんモ〜ォォ」って鳴いている牛を見たら「牧歌的だなぁ」と思うのも良いけど、「この子何を訴えているんだろう?」って想像してみるのも面白いですよ。

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書いている人

しゃべらないけど発信はマメ 田中一馬(カズマ)

1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。
小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。
2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。
2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。
好きなものはカメラ、カレー、コーヒー、純米酒。

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